♪劇的な表現で描かれる歌曲の傑作
「魔王」はシューベルトが18歳の時に作曲した、
ごく初期にして最上級の傑作歌曲です。
偶然訪れた友人の話によると、ゲーテの詩を手に取った
シューベルトは、しばらくそれを見つめながら
部屋の中を行ったり来たりしていましたが、
徐に席に着くと一気呵成に書き上げたといいます。
詩の中では嵐の夜、病に震える息子を抱き、
自宅へと馬を走らせる父親と、息子に死の淵に誘い込むかのように
語りかける魔王の3者のやりとりが物語風に描かれています。
歌手は3人の声を使い分けなければならず、
また激しく3連を刻み続け歌以上に物を言うピアノ伴奏にも技術が要求され、
難曲にして歌曲表現の極限ともいわれています。
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この曲を聴いたゲーテは当初、あまりの生々しい表現に口を閉ざしていましたが、
シューベルトの死後になってようやくその真価を認めたといいます。
また、作曲当時無名だったシューベルトは大手の出版社から相手にされず、
有志によって100部のみが作品番号1として自費出版されました。
リストは「魔王」の他にもシューベルト作品を多数ピアノ編曲しています。

Frantz Peter Schubert:Erlkönig Op.1
シューベルト:魔王.mp3