2016年08月04日


クライスラー:愛の悲しみ


クライスラー:ヴァイオリン名曲集
パールマン(イツァーク)
EMIミュージック・ジャパン(2008-06-25)
おすすめ度の平均: 5.0
5珠玉の小品集


♪自身の作品「愛の喜び」と対を成す感傷的な姉妹曲

前回、クライスラーの“偽称作曲”のことに少しばかり触れましたが、
今回はこれについてもう少し詳しくお話ししましょう。

事情から医学を学び、将校にもなったブランク期間から復帰後、
クライスラーの活動状態は厳しく、演奏機会にも恵まれませんでした。
軌道に載りかけたところで間を空けたのが響いたのでしょう。

そこでクライスラーは起死回生の策に出ます。
単に自作曲に過ぎないヴァイオリン曲のいくつかを、
図書館や修道院の資料室で発見したヴィヴァルディなどの、
過去の大作曲家たちの未発表曲だと偽り、自ら演奏して注目を集めたのです。
この嘘に気づく者は当時誰もいませんでした。

それどころか批評家たちは「新発見の作品はどれもすばらしいが、
クライスラーの演奏は未熟だ」とこき下ろしたのです。
つまりクライスラーが闘っていたのは、
このように外面だけで物事を判断する権威主義に対してだったのです。

しかし聴衆たちはクライスラーの卓越した演奏を聞き逃しませんでした。
こうして権威を打破するための嘘をきっかけに、
クライスラーはヴァイオリニストとして大きく羽ばたいていきました。

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その嘘がなぜ30年も過ぎてから見破られたのでしょう?
それはある批評家が「発見されたヨーゼフ・ランナーの未発表曲
(実はクライスラー作)はシューベルト作に匹敵する出来だ」
と絶賛したことにクライスラーが激怒したためです。
クライスラーは心から尊敬するシューベルトと、
自分のような者の作品が同等に並び賞されたことが我慢ならなかったのです。
シューベルトに申し訳ないという謙遜の思いからでした。

しかしこのやりとりを不審に思った新聞記者に問い詰められ、
クライスラーはとうとう長年の嘘を打ち明けたのでした・・・。

さて話を作品に戻すと「愛の悲しみ」は前回の
「愛の喜び」と対をなす、これも広く人気の小品曲です。
「愛の喜び」が長調で快活に喜びを表現しているのに対して、
こちらは短調で文字通り悲しげな気分を描いています。
どちらの曲もシンプルながら微妙な機微のある、
ヴァイオリニスト必須のレパートリーになっています。




クライスラー:愛の悲しみ
Kreisler:Liebesleid


*楽曲の著作権が継続中のため音源はストリーミング再生のみです



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2013年10月26日


フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調 第4楽章

フランク:ヴァイオリン・ソナタ/ブラームス:ホルン三重奏曲
価格:
パールマン&アシュケナージ
ユニバーサル ミュージック クラシック(2013-05-14)
売り上げランキング: 19413

♪ベートーヴェンやブラームスと並ぶヴァイオリンソナタの傑作

フランクは1822年にベルギーで生まれ、フランスで活動した作曲家・オルガニストです。

彼の楽才を見抜いた父は、早くからフランクにピアノを教え、37年にパリ音楽院に入学。
翌年には早くもピアノの大賞を受賞し、その後もフーガで一等賞、オルガンで二等賞を受賞。
42年に優等の成績でパリ音楽院を卒業するなど、その音楽家人生は順風満帆でした。

しかし、彼は時代の潮流に流されない、堅実な人間でした。

当時のフランスはオッフェンバックに象徴されるような、
華やかで楽しげなオペレッタが持て囃されていました。
重厚なドイツ的な音楽などは、一般の聴衆の意識からは、ほど遠いものだったのです。

そんな時代にあってフランクは、ドイツ的基盤に則った自らの音楽を構築し、
また、ピアノ教師や教会のオルガニストとして日々の生計を立てながら、
清貧質朴の中、早朝の時間を活かして地道に作曲活動を続けていたのです。

フランクの父はベルギー系、母はドイツ系で、フランス音楽の中にあって独特の
ドイツ的ムードを醸し出す彼の音楽に、生まれもったその血が影響していると言えます。
代表作「交響曲 ニ短調」には、ことさらそのことが色濃く反映されています。
ニ短調の重い第一楽章などは、とてもフランスの音楽だとは思えません。

静かで堅実に暮らしたフランクの作品が世に出たのは晩年のことです。
彼は69歳でこの世を去っていますが、代表作である「弦楽四重奏曲 ニ長調」や、
「交響曲 ニ短調」などはみな、最後の5年間ほどの期間に作曲されています。

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そして、同じく代表作である「ヴァイオリンソナタ イ長調」も、その例にもれません。
ベートーヴェンやブラームスの作品と並び、古今のヴァイオリンソナタの中でも
最高のひとつに数えられるこの曲は、彼が64歳の時の作品です。

同郷ベルギー出身の大ヴァイオリニスト、ユジェーヌ・イザイの
結婚のお祝いとして作曲され、イザイ自身によって初演されました。
作曲がギリギリだったため、式場にできあがったばかりの譜面が届けられ、
その場でイザイが弾いたという逸話が伝えられています。

サロン風の小品が持て囃された当時のフランス音楽界にあって、
ヴァイオリンとピアノが濃密にかけ合うこの作品は、すぐには好まれませんでしたが、
やがてはソナタの傑作として、不動の位置につくようになったのです。

第4楽章はピアノから始まる、カノン風の楽しいかけ合いです。
主題となる旋律が特に美しく、全曲中でも聴き所のひとつになっています。





フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調 第4楽章 [7:01]
César Franck: Sonata for Violin and Piano in A major
4. Allegretto poco mosso



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2013年04月08日


ドヴォルザーク:《4つのロマンティックな小品》 Op.75 第1曲 カヴァティーナ

prelude-SAYAKA
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5.0点 聴く者の心を揺さぶる音楽
5.0点 庄司紗矢香のベストアルバム。
発売日:2007-08-15
メーカー:ユニバーサル ミュージック クラシック
アーティスト:庄司紗矢香
時間:57(分)

♪ヴァイオリンの奏でる旋律も美しい隠れた名曲

『4つのロマンティックな小品』はドヴォルザークが1887年に作曲し出版された、
全4曲からなるヴァイオリンとピアノのための小品集です。
この作品は、『弦楽三重奏のためのミニアチュール(バガテル)』Op.75aという、
ヴァイオリン2つとヴィオラひとつのための弦楽曲から改作されています。

当時のドヴォルザーク家は、プラハのジトナー街で夫人の母親と同居していました。
彼女は一室を、化学を学ぶ若い学生のヨセフ・クルイスに賃貸していました。
クルイスはプラハ国立劇場管弦楽団の一員であるヤン・ペリカンに入門して
ヴァイオリンも学んでいたため、二人はしばしばヴァイオリンを合奏していたのです。

ヴィオラ奏者だったドヴォルザークは、二人のデュエット演奏を耳にして、
二人と共演できるような弦楽三重奏曲を作曲しようと思い立ったのでした。
そこでまず着手されたのが、1887年1月7日から14日までに作曲された
『三重奏曲ハ長調(イタリア語: Terzetto)』Op.74(B.148)でした。

しかしこの曲は難しすぎてクルイスの手に負えなかったため、
ドヴォルザークはかなり簡単な別の三重奏曲を作曲することになりました。
こうして生まれた第2の弦楽三重奏曲は《ミニアチュール》と名付けられ、
第1楽章「カヴァティーナ」、第2楽章「奇想曲」、第3楽章「ロマンス」、
第4楽章は「悲歌(あるいはバラード)」 と呼ばれました。

クルイスが各楽章にこのような題名を付けていたのですが、
これについてはドヴォルザークも同意していたとみられています。

ドヴォルザークはこの弦楽三重奏版の小品集に満足していましたが、
直ちにヴァイオリンとピアノのための編曲にも取り掛かりました。
この新しい版をドヴォルザークは『ロマンティックな小品集』Op.75と呼び、
作曲年代として自筆譜の終わりに「1887年1月25日」と記入しています。
『4つのロマンティックな小品』は、ベルリンの出版社ジムロックより出版されました。

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弦楽三重奏版と編曲版には、音楽的内容においてほとんど変更がなく、
第1曲(第30小節〜第36小節)で、ほんの少し和音の最低音を変えたことや、
第3曲の曲末に4小節を付け足して、やや長くしたといった程度です。
但し、第2曲と第3曲については、発想記号が変えられています。

第1曲はピアノ伴奏によるオスティナート音型が特徴的です。
全編を通したこの反復は、弦楽三重奏版では第2ヴァイオリンが弾いています。
また、『カヴァティーナ』の題名は編曲版にはついておらず、
ただ、「アレグロ・モデラート」とだけ表記されています。

ドヴォルザークは後に三重奏版の存在を忘れてしまい、1901年にジムロックに、
「三重奏とされる曲が『ロマンティックな小品』である筈ありません」と釈明しています。
しかし、自筆の三重奏版の譜面とクルイスによるパート譜の浄写が、
1938年になって再発見され、ドヴォルザークが勘違いしていたことが証明されました。
結局、初稿である三重奏曲の『ミニアチュール(バガテル)』が出版されたのは、
さらに後の1945年のこと、チェコの出版社(Hudební Matice Umělecké Besedy)によってでした。





ドヴォルザーク:《4つのロマンティックな小品》 Op.75 第1曲 カヴァティーナ [3:09]
Antonín Dvořák:Four Romantic Pieces for violin and piano Op.75, B.150
1. Allegro moderato in B-flat major



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2012年05月03日


パッヘルベル:3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ 二長調

パッヘルベルのカノン~バロック名曲集
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SMJ(SME)(M)(2008-11-19)
売り上げランキング: 5361

♪「カノン」と「ジーグ」の連続演奏で完成する『パッヘルベルのカノン』

「カノン」の新録音に続いて「ジーグ」と、『パッヘルベルのカノン』を特集していますが、
カノン・シリーズの締めくくりは、オリジナルに沿った演奏でお届けしたいと思います。

この曲は『3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ 二長調』が原題で、
「カノン」と「ジーグ」を続けて演奏するのが正式なスタイルです。
一般には「カノン」だけを演奏するのがほとんどですが、
2曲を連続演奏することで、初めてパッヘルベルの本意も理解できるでしょう。

また、これまでは弦楽オーケストラの編成で録音してきましたが、
今回はオリジナル通り、3本のヴァイオリンとチェロ、チェンバロの編成にしました。
弦楽パートだけで考えればこの作品は、弦楽四重奏に極めて近いと言えます。
大編成では大味になってしまう、微妙なニュアンスをお楽しみ頂けると思います。

ところで、『カノンとジーグ ニ長調』には、パッヘルベルの自筆譜がありません。
パッヘルベル作なのは確かなようですが、楽器編成には疑問も持たれています。
研究者や指揮者によっては、元はオルガン曲だったとする声もあります。

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パッヘルベルは生前からオルガン奏者としてとても有名でした。
作曲家としても特に、オルガン曲のジャンルで知られ、『コラール変奏曲集』
『コラール前奏曲集』など多数のコラール編曲を作曲しています。
このあたりにも“カノン=オルガン曲説”の根拠があると考えられます。

真相は定かではありませんが、そんなことはどうでもいいようにも思います。
事実、現代でもパッヘルベルのカノンは、弦楽以外でもピアノ独奏を始め、
それこそあらゆる楽器で演奏され、ポップスの分野でもカバーが後を断ちません。
“名曲はどんな形でも名曲”の、最も典型的な例と言ってもいいでしょう。





パッヘルベル:3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ 二長調
Johann Pachelbel:Canon and Gigue in D



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2011年11月08日


タルティーニ:悪魔のトリル (ヴァイオリンソナタ ト短調) 第1楽章

悪魔のトリル ― ヴァイオリン名曲集
中古最安価格:5%OFF ¥ 1,640 (1店出品)
レビュー平均: 3.8点 (6人がレビュー投稿)
5.0点 一曲入魂の至芸
5.0点 涙、涙、涙。
4.0点 金属的な音?
発売日:1999-09-22
メーカー:EMIミュージック・ジャパン
アーティスト:ミルシテイン(ナタン)

♪ヴィヴァルディと並ぶイタリア後期バロック音楽の巨匠

イタリアの後期バロック音楽と言えば、まずヴィヴァルディの名が浮かびますが、
それに比肩するほどの演奏技術と作曲の量、質を誇った人物がいます。
1678年生まれのヴィヴァルディから、遅れること14年後の1692年に、
イタリアのピラーノに生まれた、ジュゼッペ・タルティーニがその人です。

タルティーニはほとんど独力で、ヴァイオリン演奏を身につけたと言われ、
高度な技巧の開発により1728年、パドヴァに音楽学校を創立しました。

また彼は常に新たなヴァイオリン奏法を模索していたとされ、
そうした状況下、ある夜、不思議な夢を見るに到ります。

「おまえがもし魂を売るなら、願いを何でも叶えてやろう」

夢の中に現れ、そう言ってタルティーニに迫る悪魔の言葉に、
彼は恐れをなして自らの魂を売ってしまいました。

その代償として悪魔はタルティーニのヴァイオリンを手に取り、
超人的な技巧で世にも美しい曲を弾き始めました。
人間の想像力を超えた名演奏に、狂喜、陶酔するタルティーニ。

やがて目覚めた彼は、跳ね起きると急いでヴァイオリンをつかみ、
今聴いた演奏を再現しようと試みましたが、まったく不可能でした。
しかし、何とか記憶をたどりながら書いたのが、
後に彼の代表作となる、ト短調のヴァイオリンソナタでした。

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この曲にタルティーニは自ら「悪魔のトリル」と名づけました。
三つの楽章からなるこのソナタの第3楽章に、
「悪魔のトリル」と呼ばれる、奇怪で超人的なトリルが現れます。

タルティーニは生涯に多くの作品を残しましたが、
そのほとんどがヴァイオリン協奏曲とヴァイオリンソナタでした。
同時代の主流であったオペラや宗教音楽は、まったく作曲していません。

また、現存する作品は少なく、残った作品も作曲時期などが曖昧なため、
現在も学者たちによって、時期別の分類が試みられています。





タルティーニ:悪魔のトリル (ヴァイオリンソナタ ト短調) 第1楽章
Giuseppe Tartini:Devil's Trill Sonata (Violin Sonata in G minor)
1. Larghetto affettuoso



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2011年09月14日


ペルゴレージ:シチリアーノ

アヴェ・マリア~オーボエ作品集~
新品最安価格:16%OFF ¥ 2,564 (4店出品)
レビュー平均: 5.0点 (1人がレビュー投稿)
5.0点 オーボエが歌うイングリッシュホルンが祈る
発売日:2009-10-24
メーカー:マイスター・ミュージック
アーティスト:池田昭子 石田三和子

♪J.S.バッハ、モーツァルトにも影響を与えたイタリア・バロックの天才

ペルゴレージが生きた1710年から1736年はバロックも終盤という時代でした。
イタリアではバロック音楽の中心人物ヴィヴァルディ(1678-1741)が、
ドイツでは音楽の父であるJ.S.バッハ(1685-1750)が活躍していました。
ペルゴレージは両巨匠の存命中に生まれ、二人に先立って亡くなっています。

ペルゴレージは大成功となった『奥様女中』のようなオペラ・ブッファと、
『スターバト・マーテル』のような宗教作品の作曲家として知られています。
前者ではモーツァルトやロッシーニへ続く、オペラ・ブッファの基礎を築いたとされ、
後者では同名曲を作曲した、後の多くの作曲家たちに影響を与えたとされています。

J.S.バッハは『スターバト・マーテル』の作曲は行なっていませんが、
ペルゴレージのこの曲を、最晩年に丸ごと編曲しています。
ドイツ語の旧訳聖書・詩編51にテキストを入れ替え、調性はト短調からヘ短調に移した、
モテット『いと高き者よ、私の罪をあがなってください BWV1083』がそれです。

バッハは青年期にヴィヴァルディの協奏曲を編曲して研究していました。
このように他人の作品や自作の編曲を行うことはよくありましたが、
最晩年に原曲を大きな変化もつけずに、ほぼそのままの形で用いたことは、
その意味合いを考えると、とても興味深いことだと言えると思います。

ペルゴレージの初期古典派ともいうべき作風を、学びたかったのかもしれませんが、
もっと純粋にバッハは、ペルゴレージの『スターバト・マーテル』という作品自体を愛し、
それに何らかの形で関わりたかっただけなのかもしれません。
それほどに少し聴いただけでは、ほとんど違いがわからないような編曲です。

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ところでペルゴレージの『シチリアーノ』は、どこかで聴いた気がしないでしょうか?
バッハの有名な「フルートソナタ」BWV1031の『シチリアーノ』と似ています。
もっとも最近ではBWV1031は息子のエマヌエル・バッハ作という説もありますが、
そこに父からの指導、助言があったとも言われています。

いずれにしても年代や状況からして、ペルゴレージが真似たとは考え難く、
むしろバッハ親子のどちらかが、ペルゴレージに影響された可能性はあります。
もちろんまったくの偶然で、似通ったということもあるかもしれませんが…。





ペルゴレージ:シチリアーノ
Giovanni Battista Pergolesi:Siciliana



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2011年03月20日


ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調 Op.131 第6楽章

ベートーヴェン:序曲集、弦楽四重奏曲第14番 [DVD]
定価:¥ 5,000
新品最安価格:14%OFF ¥ 4,252 (5店出品)
発売日:2008-12-24
メーカー:ユニバーサル ミュージック クラシック
出演:バーンスタイン(レナード)
アスペクト比:1.33:1
フォーマット:Color Dolby DTS Stereo
時間:92(分)

♪「音をもって表現しうるもっとも悲痛なるもの」…ワーグナー

9曲の交響曲、16曲の弦楽四重奏曲、32曲のピアノソナタ - 。
この三つのジャンルがベートーヴェン作品の主要な柱とされています。

交響曲がベートーヴェンの顔であることは言うまでもありませんが、
残るふたつもベートーヴェンが、生涯に亘って手がけた言わばライフワークです。
ですからそこにはその時々のベートーヴェンの精神的、音楽的過程が表れています。

ベートーヴェンが弦楽四重奏曲に着手したのは、交響曲と同じ30歳の時でした。
耳疾をきっかけに社交的だった性格が一変したベートーヴェン。
カントやプラトンなどの哲学書を読み、思索にふけり、人生に真摯になっていきます。
そこには親友でヴァイオリニストのカール・アメンダの存在がありました。

夜を徹してたがいの思想を語り合ったアメンダとベートーヴェンは、
切磋琢磨し刺激しあう中で、やがてそれぞれの進む道へ歩んでいきます。
アメンダは教会の司教に、ベートーヴェンは音楽で啓蒙する作曲家に。

弦楽四重奏曲にはベートーヴェンのこうした思想性が色濃く表れています。
マーラーの編曲でも知られる、第11番「セリオーソ」から十数年を経て、
その間に第九やミサ・ソレムニスなどの大曲を挟みながら、
再びベートーヴェンは金字塔となる、後期弦楽四重奏曲の作曲に着手します。

これらは第九以降のベートーヴェンの心境を知る手がかりとなる作品群です。
大規模な管弦楽曲を離れたベートーヴェンは、
残りの情熱のすべてを弦楽四重奏曲の作曲に注ぎ込みました。

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その頂点のひとつとも言えるのが弦楽四重奏曲 第14番 作品131です。
他からの要望ではなく自らの創作欲のままに作られたこの作品は、
奥行きと深みのある、高い芸術性を聴くものに感じさせます。

第1楽章をワーグナーは「音をもって表現しうるもっとも悲痛なるもの」と評し、
カール・ホルツに連れられて、初演を聴いたシューベルトは大変興奮して、
「この曲のあとに一体何を書けというのだろう」と語ったといわれています。





ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調 Op.131 第6楽章
L.V.Beethoven:String Quartet No. 14 in C♯ minor, Op. 131
6. Adagio quasi un poco andante



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2011年03月16日


ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 Op.130 第5楽章 「カヴァティーナ」

ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集
定価:¥ 6,300
5.0点 タカーチの最高傑作では!
5.0点 静かに!
5.0点 素晴らしい演奏
発売日:2004-12-22
メーカー:ユニバーサル ミュージック クラシック
アーティスト:タカーチ弦楽四重奏団

♪晩年のベートーヴェンが涙しながら書いた至高の旋律

「自分がこれまで作曲してきた中で、最も感動的な楽章」
こう語ったというベートーヴェンは、涙しながらこの音楽を作曲したと伝えられます。

第九以降の後期弦楽四重奏曲である、第13番の第5楽章「カヴァティーナ」は、
名旋律の多いベートーヴェンが書いた、最も美しいアダージョのひとつです。
これに比肩するのはおそらく、第九の第3楽章ぐらいでしょう。

「カヴァティーナ」でのベートーヴェンには、それまでのような闘いの姿はありません。
“苦悩を突き抜けて歓喜へ”といった激しい精神的な奮起や、
自分との闘いといった世界を越えた、別次元の心境を感じさせます。
交響曲では描いた理想や理念に徹したベートーヴェンですが、
ここでは自らの胸のうちを開いて見せているかのようです。

人生のすべてをあるがままに受け入れ、味わいかみ締めるような趣き。
そこには祈り、憧憬、希求、孤独、感謝、諦観といった矛盾するような様々な感情が、
不思議な統一感をもってひとつの音楽の中に集約されています。
苦難の多かったベートーヴェンが晩年にたどり着いた至高の境地です。

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フルトヴェングラーはこの楽章を自ら弦楽合奏用に編曲、録音しています。
第13番の最終楽章には元々、後に「大フーガ」となる作品が置かれていましたが、
フルトヴェングラーはこの曲においても、名演とされる録音を残しています。

「大フーガ」はあまりに長大だったため、出版社などが差し替えを促しました。
ベートーヴェンは珍しくそれを受け入れ、新たに軽いタッチの楽章を書きました。
しかしそれはあくまで対応策で、第13番の終楽章はやはり「大フーガ」です。
最近では第13番のあとに「大フーガ」を加える演奏も増えています。





ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 Op.130 第5楽章 「カヴァティーナ」
L.V.Beethoven:Strings Quartet No.13 in B flat major, Op.130
5. Cavatina. Adagio molto espressivo



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2010年06月19日


ガブリエル=マリ:金婚式 -La Cinquantaine-

ヴァイオリン名曲集ア・ラ・カルト
ギトリス(イヴリー)
TOSHIBA-EMI LIMITED(TO)(M)(2007-08-22)
おすすめ度の平均: 5.0
5二度目に納得する演奏
5彷徨えるギトリス
5まさに至上最高の妖艶な音色

♪ヴァイオリン愛好家にも人気の優雅な小品

ヴァイオリン小品の名曲として大変親しまれている作品です。
元は管弦楽曲・ピアノ独奏曲でしたが、
ヴァイオリンとピアノ用の室内楽として編曲され、
そちらはヴァイオリン愛好家からも人気です。

クライスラーの「愛の悲しみ」を思わせるような優雅な旋律は、
それ自体がヴァイオリンの特性によくあっているのかもしれません。

結婚50周年である金婚式を祝う内容のこの曲は、
実際の金婚式でもパーティーの席で演奏されるなどして場を飾っています。

出だしは短調でどこか物悲しさもありますが、
中間部では同主調の長調に転じ、力強く祝福のムードを盛り立てます。
この部分が好きだという声もよく耳にします。

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作曲のガブリエル・マリーは19世紀中頃のパリに生まれた指揮者、作曲家です。
パリ音楽院に学び、ピアノ奏者・ティンパニ奏者として活動した後、
数年間に渡りコンセール・ラムルーの合唱指揮者を務めました。
ワーグナーに傾倒していたマリーは、
「ローエングリン」のパリ初演時の合唱を指揮しました。

その後は国民音楽協会を始め、各所で指揮者としての活動を続けました。
作曲家としてはこの「金婚式」のみで知られています。






Gabriel Marie:La Cinquantaine
ガブリエル=マリ:金婚式.mp3



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2009年09月11日


クライスラー:愛の喜び

クライスラー:自作自演集
クライスラー(フリッツ)
BMG JAPAN(2002-07-24)
おすすめ度の平均: 5.0
5クライスラーの人柄が偲ばれる優しい演奏
5ノスタルジック気分満点
5高校時代の愛聴盤がCDで蘇った

♪愛され続けるヴァイオリン小品の定番曲

クライスラーはオーストリア出身の作曲家、ヴァイオリニストです。
ウィーンの医師の子として1875年に生まれた彼は
早くから音楽的才能を見せ、7歳で特例によりウィーン音楽院に入学。
卒業後はパリ音楽院に学び、12歳でそこを主席で卒業します。

翌年にはニューヨークでヴァイオリニストとしてデビューしますが、
家庭事情などにより一旦は音楽を離れて陸軍将校を務め、
数年間、医学や美術を学びました。

ブランクを経た後再び表舞台に復帰したクライスラーは、
ベルリンフィルとの共演、ロンドンデビューと国際的に活躍しました。

作曲家としては多くの魅力的なヴァイオリン曲を作曲しましたが、
ベートーヴェンやブラームスのヴァイオリン協奏曲のカデンツァなども、
クライスラーが残した大きな仕事のひとつです。

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また彼は自作曲を過去の作曲家の作品として発表していたことでも有名で、
30数年後にそれを明かした時には一大センセーションになりました。

愛の喜びはクライスラーの代名詞的に広く知られるヴァイオリン小品です。
題名の通りに愛がもたらす喜びや快活な気分を、親しみやすい旋律で明朗に描いています。




クライスラー:愛の喜び
Kreisler:Liebesfreud


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