シューベルト：歌曲「魔王」と「アヴェ・マリア」 / Franz Peter Schubert：Der Erlkonig, Op.1 - Ave Maria, Op.52-6

♪第46話：【特別編】ガザの病院の惨劇にピアノ永井美里とヴァイオリン風華レアが音楽のメッセージ

こんにちは。
CMSL所属のピアニスト、永井美里です。

今回は順番で指揮者のトワさんが登場予定でしたが、私がどうしてもとお願いして続けての登板になりました。

前回、リストの「ラ・カンパネラ」をお送りした直後、ガザで大きな出来事がありました。
何らかの理由により病院が爆発し、入院患者や医師など多くの犠牲者が出ました。

テレビでは繰り返し現場の悲惨な映像が放映され、爆発に対して反発する周辺諸国が盛んにデモ集会を起こす様子も紹介されていました。
その動きはパレスチナに留まらず西側諸国にも拡がっていました。

目に映る信じられないような光景に私はしばらく呆然としていました。
そして、しばらくして我に返ると、私は自宅のピアノに向かい鍵盤を叩きつけるようにある曲を弾いていました。
それがシューベルトの初期の歌曲「魔王」でした。

この曲はゲーテの詩をもとにシューベルトが18歳で作曲した作品で、語り手、父親、幼い子供、そして魔王が登場して物語が展開していきます。
嵐の夜、魔王の死の誘いに怯える子供を腕に抱き、父親は彼を励ましながら馬を鞭打ちます。
しかし最後は魔王の力に抗うことができず、子供は父の腕の中で息絶えてしまうのです。

シューベルトの音楽はそうした子供の恐怖と父親の魔王に対する怒りを表すかのように、終始ピアノの激しい連打が楽曲を貫いています。
私は衝動的にリストが編曲した「魔王」のピアノ版を夢中で弾いていました。

そして何度か同じ曲を繰り返して弾くうちに、これをぜひヴァイオリンとのデュオで奏でたいと考えていました。
それで急遽、コンマスのレアさんに連絡してその旨を伝えました。

レア：美里さんから急に連絡が来た時は驚きました。でも、私も病院の空爆のニュースはテレビで見て知っていたので、すぐに了承して美里さんの自宅へ向かいました。

美里：ほんとに急にごめんね。でもこの思いは形にしておくべきだと思ったの。

レア：私はあまり怒ったりしないタイプですけど、あの映像にはめずらしく憤りが抑えられませんでした。どちらの攻撃なのか？ よりも、あの場所で罪もない人々が苦しみ泣き叫ぶ光景が受け入れられなかったんです。

ですから美里さんの家に着いてからも夢中で二人でヴァイオリン用にアレンジして、その場で即興的にレコーディングしましたね。

美里：幸い家にはピアノ用の簡易スタジオとレコーディング設備があるので、その時の二人の思いを音に封じ込めることができたと思います。

レア：あと、激しい「魔王」だけでは後味がよくないので、私からの提案で同じくシューベルトの歌曲「アヴェ・マリア」も録音しました。この曲は敬虔で清らかな曲なので、それを示すためにいつもと違うヴァイオリンを弾いてみました。

美里：とてもよかったよ。「魔王」と「アヴェ・マリア」をワンセットで聴いていただきたいよね。

レア：はい、そして今も続くイスラエルとパレスチナの紛争が一日も早く終結して、人々がもとの日常を取り戻せることを心から願っています。

美里：私も、もうこれ以上の惨劇が起こらないよう、平和な日々が訪れることを心からお祈りしています。

シューベルト：歌曲「魔王」Op.1 [2023]
Franz Peter Schubert：Der Erlkonig, Op.1 [4:31]

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Schubert-Der-Erlkonig-2023.mp3

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シューベルト：歌曲「アヴェ・マリア」Op.1 [2023]
Franz Peter Schubert：Ave Maria, Op.52-6 [5:01]

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Schubert-Ave-Maria-2023.mp3