2023年09月10日


ブラームス:弦楽六重奏曲 第1番 変ロ長調 Op.18 第2楽章(ピアノ編曲)[2023] / Johannes Brahms:Sextet for Strings No.1 in B flat major, Op.18 2. Andante ma moderato

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♪第37話:【特別編】永井美里のドイツ旅行記、ブラームスが滞在したバーデン・バーデンの家を訪ねる

みなさん、こんにちは。
CMSL所属のピアニスト永井美里です。

前回は私が約2週間をかけてポーランドのショパンゆかりの地を訪ねていたことをお話ししました。
実はこれにはまだ続きがあります。

ショパンの生家を中心とした聖地めぐりは思ったより早く日程を終えてしまいました。
まだ日数に余裕があったので、せっかくですからもう少し、他の作曲家ゆかりの地を訪ねてみたいと考えました。

そこで思い立ったのがブラームスです。
これまでお話したことはなかったかもしれませんが、プライベートの私が好んでよく弾くのが、シューベルトの即興曲とブラームスの間奏曲なのです。
大抵ワンセットで弾いています。とても心が落ち着くので好きなんです。

それと、ブラームスは私が誕生日が近いせいか、聴いていて最もしっくりくる作曲家のひとりです。
平たく言うとかなり好きです。

そんなこともあって、ポーランドを発った私はそのままドイツのリヒテンタールに向かいました。
本当は生家にも行きたいと思っていたのですが、念のために調べてみるとブラームスが生まれたハンブルクの家は、第二次世界大戦で消失してしまったのでした。残念。

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それでもうひとつのブラームスゆかりの地として知られるドイツ随一の温泉保養地バーデン・バーデンへ行ってみることにしました。
ブラームスは1865年から1874年の10年間、毎年5月から10月頃までバーデン・バーデンに滞在していました。その頃30代で既に有名な作曲家だったブラームスはウィーンを活動拠点としていました。

バーデン・バーデンを夏の間の拠点としたのは、クララ・シューマンがそこにいたからです。
シューマンが亡くなってからのクララは、5人の子供たちと共にそこに暮らし、ピアニストとしての活動で生計を立てていました。
ブラームスは精神的にも経済的にもシューマン家を援助していました。

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ブラームスが暮らしたバーデン・バーデンの家は、現在は「ブラームスハウス」と呼ばれ博物館として公開されています。
彼はこの家の居間と奥の寝室の二部屋を借りていたそうです。居間にはピアノと机があります。
天井、床、壁は当事からそのままで、家具は同時代の物を入れているということです。
この家は一時、解体の危機にありましたが、世界中のブラームス・ファンが募金を募り保存することができました。

この家でブラームスは数々の重要な作品を書きました。
ルター訳ドイツ語聖書からの章句で構成された「ドイツ・レクイエム」、尊敬するベートーヴェンに追い付こうと作曲に20年以上を費やした「交響曲1番」の仕上げ、そしてオーストリアのペルチャッハで作曲をしていた「交響曲2番」の仕上げもここで行なわれました。
さらに、近くに住むクララの誕生日には、有名な「ブラームスの子守唄」をここで演奏したそうです。

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ブラームスの「交響曲第1番」は第4楽章に印象的なホルンの独奏が登場します。
この主題は愛するクララに向けたラブコールであるとも言われています。
「交響曲第1番」は彼が29歳の頃には第1楽章から第3楽章までのスケッチが書き上げられていましたが、全曲が完成したのはそこから14年後の43歳の時です。
このことから第4楽章には特に時間をかけたのがわかります。

ブラームスハウスは通りよりも少し小高い丘の上にあります。
もしかするとブラームスはここからクララが住む家に向かい、呼び掛けるイメージでホルンの主題を書いたのかもしれません。
そんなことに思いをめぐらせると、ちょっとだけ身震いするような気持ちになりました。

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さて、今回私がお届けするのはブラームスが1860年、27歳の年に作曲した「弦楽六重奏曲第1番」から第2楽章です。
この楽章は作曲された年にブラームス自身によってピアノ独奏用に編曲され、クララ・シューマンの誕生日にプレゼントされました。
出版されたのは1927年ですから、作曲から67年後のことになります。

冒頭から始まる主題がとにかく美しくロマンティックで、クララに対するブラームスの熱情が迸るかのようです。
その後に続く変奏も情熱的で、作曲当時まだ20代だった若きブラームスの内に秘めた想いが、姿を変えながら様々な旋律となって表現されています。



ブラームス:弦楽六重奏曲 第1番 変ロ長調 Op.18 第2楽章(ピアノ編曲)[2023]
Johannes Brahms:Sextet for Strings No.1 in B flat major, Op.18
2. Andante ma moderato [9:57]



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posted by CMSL クラシック名曲サウンドライブラリー at 11:02 | 器楽曲・Piano | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする