♪第34話:【特別編】ウクライナの平和への祈りを込めて… 主席指揮者 アンドウトワからのメッセージ Part2
みなさん、こんにちは。
CMSLシンフォニックオーケストラの主席指揮者 アンドウトワです。
実はウクライナの方々のためにレコーディングしたのは「ローエングリン前奏曲」だけではありません。
もう一曲、ロシアの作曲家ムソルグスキーが作曲した組曲「展覧会の絵」から第10曲の「キエフ(キーウ)の大門」も録音していました。
「展覧会の絵」はムソルグスキーが急死した親友の建築家・画家ハルトマンの遺作展を訪れた際、そこで見た絵画から得た印象をもとに10曲の組曲として作曲されました。
のちにムソルグスキーが書いた原典のピアノ譜を管弦楽の魔術師と謳われたラヴェルが編曲。見事なオーケストレーションにより原曲の魅力を最大限に引き出し、そちらも広く親しまれています。
特に終曲の「キエフ(キーウ)の大門」には霊感が漲り、後半で3連を刻む弦を背後にホルンが半音下降するあたりからは、地上を超えた宇宙的なスケール感さえ漂っています。
私がなぜ「ローエングリン前奏曲」と共に「キエフ(キーウ)の大門」を選んだのか、それはもちろん題名に現在のウクライナの首都キーウが入っているからです。
これによりシンプルにこの曲がウクライナの方々にとって励ましになると考えました。
ですがこの曲を演奏するにはひとつの壁がありました。
ムソルグスキーはロシアの作曲家のため、彼の作品を演奏してもウクライナの人々はもしかしたら気をわるくされるかもしれないという点です。
私は「音楽に国境はない」という観点から特に気にせずに「キエフ(キーウ)の大門」を提案しました。
すると少なくない楽団員たちが「時期が時期だけに、今は取り上げるべきではない」と意見してきました。
実際、ウクライナのバレエ団はチャイコフスキーなどロシアのバレエ音楽を、今は上演していないという現実があります。
それでも私は今がこうした状況だからこそ、敢えてロシアのムソルグスキーの音楽をやるべきだと思いを伝えました。
CMSLではこれまでも「音楽はイデオロギーの違いを越えて、国と国を結ぶ懸け橋になり得るもの」との信念のもと、チャイコフスキーやラフマニノフといったロシアの作曲家たちの作品を積極的に取り上げてきました。
100年も前の時代を生きた作曲家と彼らが残した作品は、今ウクライナで起きている出来事とは全く関係がありません。
またクラシックの名曲は国を越え、民族の違いを越えて、人類共通の文化遺産となるべきものです。
「キエフ(キーウ)の大門」のレコーディング後も、「公開はまだよした方がいい」という意見がありました。
しかし私は、キエフを題名に持つこの曲にはウクライナの方々を励ます力があるものと、今も固く信じています。
この曲のように壮大で輝かしい姿をウクライナが取り戻すことを心より願っています。
ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》から 「キエフの大門」 (ラヴェル編曲) [2023]
Mussorgsky:"Pictures at an Exhibition"(Orch. M.Ravel)
10. La Grande Porte de Kiev [6:31]
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Mussorgsky-Pictures-at-an-Exhibition-La-Grande-Porte-de-Kiev-2023.mp3
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