2023年07月22日


ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 Op.67 「運命」 第1,2楽章 [2023] / Ludwig Van Beethoven:Symphony No.5 in C minor, Op.67 1. Allegro con brio, 2. Andante con moto

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♪第24話:【トワ子の窓 第2回】トワの父親の安藤京太郎と妹のアンドウミワがゲスト出演…評論家の故U.K氏について熱く語る Part1

こんにちは。
CMSLシンフォニックオーケストラの主席指揮者アンドウトワです。

今回は久しぶりに真面目にお話ししたいことがあるので、「トワ子の窓」は第2回と第3回を特別編としてお送りします。初回に引き続きコンマスのレアにもお手伝いしてもらいます。

レア:こんにちは、CMSLシンフォニックオーケストラのコンサートマスター。風華レアです。よろしくお願いいたします。

トワ:さあ、早速ですがスペシャルゲストをご紹介します。自己紹介をどうぞ。

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京太郎:はじめまして、こんにちは。私はアンドウトワの父親の安藤京太郎です。娘がいつもお世話になっています。

ミワ:こんにちは〜。私はアンドウトワの妹のアンドウミワです。よろしくお願いします!

トワ:なぜこの二人に来てもらったかというと、今回お届けするベートーヴェンの交響曲第5番「運命」についてお話しする上で、特に父の存在が重要な鍵になっているからです。

以前にもお話ししましたが、「運命」は私が最初にハマったクラシックの交響曲で、当時はワルターとマゼールのレコードを毎夜、交互に聴いていました。そして、私がドイツに渡り、地方オケを初めて振ったのが他でもない「運命」でした。
私にとっての指揮者デビューと言っていい演奏会でしたが、この時の演奏を父が聴きに来て、許可を得て録音もしていました。

京太郎:指揮者として、娘の記念すべき最初の演奏会でしたから、これは記録しておかなければならないと思いました。

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ミワ:その録音を大変な方に聴いていただいたんだよね。

京太郎:そう、音楽評論家として有名なU.K先生です。録音した「運命」をCD-Rに焼いて、先生のご自宅に直接送りました。私は以前から先生のファンで、何度かお手紙を送らせていただいたことがあったのです。先生はその都度、ご親切に返事を書いて送ってくださいました。

ミワ:CD-Rの感想もいただいたんでしょ?

トワ:そうなの、先生のお返事には「お若いのに面白い演奏をなさるんですね。でも、もっと暴れてもよかったのでは?」と書いてありました。私は不遜にも「もっと暴れる? 先生の演奏会のように? 私はポリシーがあって、こういうスタイルで指揮しているんです」と思ってしまいました。

京太郎:指揮者としての先生の演奏はかなり型破りだからね。私は90年代の新星日響との共演や、2000年代のアンサンブルSAKURAとの演奏会もほとんど聴きに行ったよ。どうしても行けなかった時は、あとで関係者のご自宅にお電話して、プライベートの録音をCD-Rで譲ってもらうこともした。日大管弦楽団OBオーケストラとの「第九」は、当時、唯一の所有者と紹介された日大の教授のもとに直接足を運んで、プライベート盤をお貸しいただいたりもした。

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レア:すごい!そこまでするって相当熱心なファンなんですね。U.K先生のことはCDのブックレットで解説を読んだりして知っていましたが、指揮者としても活動されていたのは知りませんでした。

京太郎:私はロック好きだった若い頃に、先生が評論家として書かれた著書を読み、「この人の解説は他の人と違って面白いなぁ。クラシックも聴いてみようかな」とその世界に足を踏み入れました。忘れもしない1990年の新星日響とのシリーズ最初の演目「英雄」は、その後の私の人生の進路を決定づけるほどに衝撃的でした。

トワ:冒頭の「ジョワン、ジョワン」の二和音だよね。

京太郎:そう、私は当日、サントリーホールの前から七列目に座り、コンサートマスターと指揮台の先生を見上げる位置で聴いていました。コンマスが先陣を切り弓を弾くと、他の楽団員たちもそれに続いて「ジョワン、ジョワン」という二回の和音がホールに鳴り渡った。私は衝撃で身体が硬直して、しばらく動けなくなりました。

トワ:CDで何度か聴いたけど、現場ではそんなものじゃなかったんでしょ?

京太郎:演奏会のあと、私は何度も新宿のCDショップに足を運んで「リリースはまだですか?いつなんですか?」と催促した。でも、ようやく入手したCDを聴いて私はひどく落胆しました。CDの録音には当日の音の十分の一も収まっていませんでした。私はあの時、録音物の限界を痛いほど思い知りました。チェリビダッケは音楽は生演奏にしか意味がないとレコーディングを頑なに拒みましたが、本当にその通りだと実感したのです。

ミワ:パパは現場の生演奏を聴いた時に、指揮者になる夢をあきらめたんでしょ?

京太郎:「英雄」の冒頭から第1楽章を聴き進めるうちに、「私も先生のように指揮台に立ちたい」と痛切に思うと同時に、「こんなスゴイ人がいるんじゃ指揮者になったって無駄だ。あきらめよう」とまったく相反した思いが自分の中で渦巻きました。結局、私は普通の会社員になりました。

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トワ:翌年に池袋の東京芸術劇場で開催された、新星日響との「運命」にも行ったんだっけ?

京太郎:ああ、あれも凄かった。第1楽章が終わった直後に、私の近くにいた人が「よし」と言ったんだけど、私も同じことを感じていた。第1楽章のテンポはまさに完璧だった。

それに比べて第2と第3楽章は割と速めで、若干拍子抜けした感もあったけれど、第4楽章の超スローな演奏にはぶったまげた。おそらく世界最遅だと思う。終演後、帰りのエスカレーターでご婦人方が「いくらなんでも遅すぎなかった?」「そうねえ」と会話していた。私も心の中で「そう思います」とつぶやいていた。

トワ:でも、第3楽章から第4楽章につなぐブリッジのティンパニ連打は感動的だと思う。あれをやったら先生のパクリになると堪えていたけど、CMSLフィルとの演奏でとうとうやってしまいました。でも、先生のパクリではなくて、自分自身で何度も考えた末での結論です。

京太郎:そうだろうね。私ももし指揮者だったらあそこは連打にすると思う。ロールではどうしても物足らなくなる気がする。

トワ:あの連打もCDより現場の方が凄かったんでしょ?

京太郎:「英雄」の冒頭と「運命」のブリッジは特に記憶に残っている。残念ながら当日行けなかった「第九」第1楽章の展開部のティンパニも、CDで聴いてあれほどなんだから現場ではさぞかし凄かったんだろうと思う。

その感激を手紙に書いて送ったら先生は「僕はアマチュアの立場だから好きにできるけれど、本職の指揮者の方々はそうはいかなくて色々と大変なんですよ」とお返事をくださった。著書の先生は強気の人に見えるけれど、お手紙から感じる先生の人柄はやさしく謙虚そのものだった。

トワ:「もっと暴れてもよかったのでは?」を最初に読んだ頃の私はまだ未熟で、先生の真意が理解できなかったけれど、今にして思えば先生はすでにあの時、指揮者としての私の本質を見抜いてらしたのかもしれないと思います。特にCMSLで楽団員のみんなと関わるようになって、自分は本当はどうしたいんだろう?とよく考えるようになりました。そうしたら、先生ではないけど「もっと暴れたい」のかもしれないと気づき始めているところです。

だから今回のCMSLとの「運命」も、自分としては以前よりかなり速くなったと思います。テンポも思い切って動かしました。

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レア:とても良かったです。トワさんが本当はそういうタイプの指揮者だとみんな気づいていたけれど、トワさん本人だけがそれに気づいてなかった…というより、気づきかけても理性で蓋をしていたんだと思います。

クレンペラーとか巨匠たちの演奏をイメージした鋳型に自分をはめ込んでいたんだと思います。トワさんと最初にブラームスの第4番を演奏した時から、第1楽章コーダの加速がもうすでにクレンペラーではないなと感じていました。ああいう熱情に任せる演奏がトワさんの本当の姿だと私は思います。クレンペラーを尊敬していたフルトヴェングラーが、自分自身は真逆の演奏スタイルを貫いていたように。

京太郎:うん、私もレアさんと同意見だ。今回の「運命」はトワとしてはかなりスタイルを変えていたけれど、もっと思い切ってもいいと思う。先生もきっとそう言うよ。先生は同じ「運命」でも新星日響とは違って、アンサンブルSAKURAではテンポも自在で暴れまくっていたからね。ティンパニがあまりに強過ぎて皮が破けそうなくらいだった。

まあ、先生は最近の指揮者がおとなしくて無個性なことが多いから、それに警鐘を鳴らす意味であえてデフォルメをつけていたと仰っていたけどね。

(次回に続く)



ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 Op.67 「運命」 第1楽章 [2023]
Ludwig Van Beethoven:Symphony No.5 in C minor, Op.67
1. Allegro con brio [7:46]



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ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 Op.67 「運命」 第2楽章 [2023]
Ludwig Van Beethoven:Symphony No.5 in C minor, Op.67
2. Andante con moto [12:40]



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▼サトレア(永井美里+風華レア)写真館

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posted by CMSL クラシック名曲サウンドライブラリー at 14:02 | 交響曲 (Symphony) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする