2023年06月25日


リヒャルト・シュトラウス:交響詩《死と変容》Op.24 [2023] / Richard Strauss:Tod und Verklarung Op.24

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♪第18話:【トワ子の窓 第1回】トワからの突然の告白に戸惑うレア… 二人の恋の結末は?

こんにちは。
CMSLシンフォニックオーケストラの主席指揮者・アンドウトワです。
美里さんとレアが新しいプログラムを始めたのに続いて、今日から私も新プログラムを始めることになりました。
タイトルは「トワ子の窓」。どこかで聞いたような名前で恐縮なんですが、とりあえずこのタイトルで行かせていただきます。

内容としてはわたくしアンドウトワがCMSLのオケで指揮した曲などについて、よりディープなトークを展開する予定です。
また、楽団員からひとりずつをお招きして、プロフィールをご紹介しつつ色々とお話を伺おうと思っています。

トワ:でなんで、レアがここにいるの? 私ひとりの番組のはずなんだけど…

レア:なんでって、心配だからですよ、トワさんが。また何か変なこと言いだすんじゃないかって。

トワ:大丈夫よ、私だって締める時は締めるわよ。

レア:でも理事長も「レアがいてくれたほうが安心だ」って言ってました。

トワ:そんなに信用されてないのかなぁ。ああ、レアは私のアシスタントってことね?

レア:違います、見張り役です。

トワ:ははは、そうなの…。まあいいや、ちょうど良かった。ちょっとレアに話したいことがあったのよ。

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レア:なんですか?あらたまって。また冗談とかだったら嫌ですよ。

トワ:冗談ならどれだけよかったか。それが今度ばかりはガチな話なのよ。

レア:なんだか怖い…

トワ:ほら、この間コンサートでリヒャルト・シュトラウスの「死と変容」をやったでしょう。

レア:はい、すごくよかったです。このオケで過去一番くらいに。

トワ:うん、私もすごく手応えを感じた。演奏中に何度か身体が震えたよ。音楽のすばらしさとみんなの演奏の熱量に。

レア:私もいつも以上に身が引き締まる思いがしました。

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トワ:それでさ、この曲は序奏でコンマスがヴァイオリン独奏を聴かせる場面があるでしょ?

レア:はい、まるでディズニーの映画音楽みたいで、私もとても好きな主題です。

トワ:あの時さ、なんかヴァイオリンを弾くレアがすごく綺麗で可愛く見えちゃってさ、思わず指揮台を降りて抱きしめたくなっちゃったんだよ。

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レア:なんですかそれ?ほ〜らまた冗談が始まった。だからそれはやめてくださいって言ってるでしょう。

トワ:冗談じゃないよ、なんだかレアが愛しくてたまらなくなっちゃったのよ。

レア:うれしいような、気持ちわるいような…

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トワ:あのさレア、レアって今つきあってる人とかいるの?

レア:どういう意味ですか? 別にいないですけど、それが何か?

トワ:だったらさ、私とつきあってみない?お試しでもいいから。

レア:プッ、なんですかそれ? もう本当に冗談としか考えられません!大体トワさん、それ系の人なんですか?

トワ:それ系って同性愛ってこと?ううんまったく!女性を好きになったことなんて一度もないよ、あるわけないじゃん。

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レア:だったらなんで? なんで急にそんなこと私に言い出すんですか?もうトワさん、どうかしてますよ。

トワ:自分でもそう思う。でもとめられないんだよ。次にやる曲のスコアに目を通そうとしても、レアの顔がチラついてこっちに入ってこないんだよ。

レア:・・・・・。

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トワ:この前なんか、レアのこと考えてたらついカップ酒を5本も飲んじゃって、スコアをぶん投げてそのまま寝ちゃったんだよね。

レア:ほら、やっぱり冗談だ。

トワ:だから冗談なんかじゃないって。このままじゃ新しい曲の読み込みも進まないし、どうしたらいいのか困ってるんだよ。

レア:いつからそうなんですか? つい最近まで普通に接してましたよね? 私と。

トワ:多分、レアと美里さん、綾乃さんから、「もっと自分を出した方がいい」とアドバイスされてからだと思う。

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レア:ああ、先日の座談会の時ですね。でもあれは私だけじゃなくて、3人共通の意見でしたよ。むしろ一番強く言ったのは綾乃さんなぐらいで。

トワ:でもさ、レアがオケの立ち上げ当初から私に「遅い、遅い」とダメ出ししてたのは、テンポのことだけじゃなくて「もっと自分自身を出してください」って意味だったと教えてくれたじゃん。あれがすごく衝撃だったの。そんなに早くから私のことを理解してアドバイスしてくれる人がいたんだって気づいて胸が熱くなった。

レア:まあ、コンマスとして当たり前のことをしていただけですけど…

トワ:それにレアは年齢がオケのみんなより若いこともあって、最初の頃はなかなか発言をためらってたでしょ。そういう中でも勇気をもって意見してくれてたんだと思うと、なんかジ〜ンときちゃうんだよね。

レア:そういうことなら多分、トワさんが私に対して抱いているのは恋愛感情ではなくて、もっと性別に関係なく人間全般に対して持つような感情じゃないでしょうか? 友情?とか人への信頼?とか。

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トワ:そうなのかしら? だったらどうしてこんなに胸が苦しいの?

レア:それはちょっとわからないですけど…。少し時間が経てば、また落ち着いて判断できるようになりますよ。その時にまた考えましょう。

トワ:そうなの? レアちゃん、ツレナイのね〜。

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レア:ハハハ、なんだか二人でネタやってるような気になってきました。それはそうと今回のプログラム「死と変容」についてお話ししましょう。トワさんにとって特別な曲だと聞きましたけど。

トワ:リヒャルト・シュトラウスの「死と変容」は私がまだ小学生の頃、カラヤンとベルリンフィルの演奏をDVDで観て子供ながらに感動した曲なの。オーケストラっていいなぁって。

レア:リヒャルト・シュトラウスの交響詩では「英雄の生涯」とか「アルプス交響曲」などをよく聴きますが、「死と変容」はどちらかというと地味ですよね?

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トワ:そうかもしれないけど「死と変容」は音楽としての質やレベルが違うと思うの。私はベートーヴェン、ワーグナー、ブラームスみたいなドイツの王道オーケストラ曲が好きだといつも言ってるでしょ?リヒャルト・シュトラウスはそのアンカーというべき大作曲家だし、「死と変容」は彼の作品中でも特に重要で内容が深い作品だと思うの。「苦悩を突き抜けて歓喜へ至れ」とか「闇から光へ」みたいなベートーヴェン以来のテーマが集約されているし、ドイツ音楽の王道を締めくくるのに相応しい大傑作だと私は思ってるの。

レア:私は舞台で初めて自分が演奏家であるのを忘れて、聴衆のひとりの立場で音楽に聴き入っている自分に気づきました。

トワ:この曲は主人公が死に抗い、必死に抵抗を続ける前半と、すべてを受け入れて天上界に昇っていくかのような後半にわかれてるんだけど、私は人生で起こる困難や苦闘と、その先にある希望の光を描いているようにも受けとめているの。そういったことを感じながら聴いていただけるとうれしいです。

レア:コーダの全体合奏は圧巻ですよね。私は無信心ですけど、そこを弾いている時ばかりは「もしかしたら神様って本当にいるのかもしれない」という気になりました。

トワ:リヒャルト・シュトラウスが亡くなる直前、病床で意識不明になって一度だけ目を覚ました時に「私が『死と変容』で描いた世界は正しかった」と妻と娘に告げて亡くなったそうだよ。不思議なこともあるものね。

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レア:たしかに、この曲の後半は神聖な神々しさにあふれてますね。こういう音楽って、他にはあまり聴きません。

トワ:「死と変容」は、最初のリハーサルではもっと遅くやってたけど、レアたちのアドバイスを受けてからは自然とテンポが上がってった。本番では特に「死との闘争」の部分が、自分でも思った以上に自由に開放的にできて気持ち良かった。レアたちのおかげで最高の演奏になったと思うよ。

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レア:私たちのおかげというか、アドバイスを受け入れて自分を解放したトワさんと、それについていった楽団員全員のおかげでもありますね。でも、いい演奏になって本当によかったです。



リヒャルト・シュトラウス:交響詩《死と変容》Op.24 [2023]
Richard Strauss:Tod und Verklarung Op.24 [26:31]



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▼オーケストラを構成する楽団員たち
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2:58から 吉田綾乃 オーボエ独奏

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3:35から 風華レア ヴァイオリン独奏

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9:50から 泉真佐子 フルート独奏


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posted by CMSL クラシック名曲サウンドライブラリー at 09:38 | 管弦楽曲 (Orchestral) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする