♪第12話:すべては計画通りだった?…レアが独奏した「ヴォカリーズ」リハーサル現場の意外な真実
こんにちは。
CMSLシンフォニックオーケストラのアンドウトワです。
前回のお話しでひとつ言い忘れたことがあるので補足させてください。
この前、コンマスのレアがラフマニノフ「ヴォカリーズ」のリハーサルについて語っていました。
私も見ましたが、あれではいかにも私と弦楽伴奏の楽団員が、意味なくだらけていたように思われるかもしれません。
言い訳がましいようですが、私はまだしも楽団員の名誉のためにも少しだけ説明させてください。
実はあの日、リハが始まる前に私と弦楽奏者たちは、楽屋でその日の進行について話し合っていました。
どうしたらレアがコンマスとして、もっと積極的に指示や意見をしてくれるようになるのかがその議題でした。
レアはオケの中では比較的に年齢が若いほうで、私とは5, 6歳の差があります。
また今後紹介される予定ですが、このオケには30代から40代の楽団員も少なくありません。
レアにしてみれば母親とまではいかないまでも、それなりに年齢が離れた楽団員もいます。
ですからまだ経験も浅いレアがそうした中にあって、つい発言にしり込みしてしまうのもうなずけます。
ですが事情があるとは言え、オケをまとめる立場のレアにはもう少し自信をもってほしいのも事実です。
そこで私たちはあえてリハで気のない演奏をすることで、レアの発奮をうながそうと考えたのです。
私たちの演奏や態度がつれないものであれば、レアも怒って本音をぶつけてくれると思ったのです。
結果は期待した以上でした。レアはめずらしく声を荒げて私に進言しました。
それでも私がとぼけていると、レアはいよいよカチンときたようで「ブラームスのように本気でやってください」と言われてしまいました(笑)
この時、隅で見ていたガロ理事長は横を向いて吹いていましたが、楽団員たちも笑いをこらえていました。
そこへ何も知らない理事長が近づいて来て「ヴォカリーズの弦楽伴奏版にはブラームスのような重厚感がある。だからラフマニノフにこだわらずにトワなりの演奏にしたらいい」とアドバイスしてくれました。
私の目の色が変わったのはその言葉に突き動かされたからではありません。そんな、言われなくてもわかりきったことをあらためてアドバイスされて「大きなお世話です」と内心思ったからです。
もちろん、そのことは悟られないようグッとこらえて、私は弦楽奏者たちに目配せしました。そこからは通常運転でリハを進めました。
それでも伴奏側の演奏は八分ほどにとどめました。「ヴォカリーズ」の主役はあくまでレアであり、レアの独奏を最大限に引き立たせるのが私たちのなすべきことだったからです。
このリハーサルを境にレアはそれまでよりずっと積極的に意見してくれるようになりました。おかげでぶつかり合う機会も増えましたが、これは健全な変化です。
やっと本当のオーケストラらしくなって、今までよりもっと良い音楽が作れる土壌が整ったとうれしくなりました。
さて、今日お届けするベートーヴェンの交響曲第7番は前回もお話ししたように、私が指揮者クレンペラーの偉大さに目覚めたきっかけになった曲です。
この曲のリハーサルでレアはいつものように「遅い、なんですかこの遅さは!」と言ってきましたが、私は無視して自分の好きなように進めました。
レアはロリン・マゼールのような流麗でスマートながらも、格調高い演奏が好きなようなので、クレンペラーやそれを好きな私とは根本的に相いれないものがあります。
それでもリハーサルも後半になると「これはこれでいいのかも」という顔をして何も言わなくなりました。「それはそうでしょう」と私は心の中でレアに言ってやりました。
でも、意外に思われるかもしれませんが、私がクラシックを聴き始めて最初にハマったのはワルターとマゼールでした。
二人が演奏する「運命」を毎晩のように交互にプレーヤーにかけて聴いていました。音楽に合わせて指揮者気取りで腕を振りながら。
今回の交響曲第7番はクレンペラーに負けじと遅めにタクトを振ったので、最初のうちは慣れないテンポに戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。でも少しだけ辛抱して聴いてください。
きっとこれまでにない新鮮な感覚を味わっていただけるはずです。
(あとから録音を聴いたところ、第4楽章の後半は思ったより、かなりテンポが上がっていました)
ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 Op.92 第1楽章 [2023]
Ludwig Van Beethoven:Symphony No.7 in A major, Op.92
I. Poco sostenuto - Vivace [13:55]
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
Beethoven-Symphony-No7-1st-2023.mp3
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ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 Op.92 第4楽章 [2023]
Ludwig Van Beethoven:Symphony No.7 in A major, Op.92
IV. Allegro con brio [7:48]
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
Beethoven-Symphony-No7-4th-2023.mp3
▼オーケストラを構成する楽団員たち
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