2023年05月23日


フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」 Op.80 - 第3曲 シシリエンヌ [2023] / Gabriel Urbain Faure:Pelleas and Melisande Suite:3. Sicilienne

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♪第8話:なぜ、このオケには女性の楽団員しかいないのか…ガロ理事長が明かしたその理由とは?

みなさま初めまして。
私はCMSLシンフォニックオーケストラでフルートの主席をやらせていただいています泉真佐子と申します。以後、お見知りおきを。

早速ですが、多分みなさんの多くが疑問に思ってらっしゃることについてお話ししたいと思います。
それは、なぜ「このオケの楽団員には女性しかいないのか?」ということに関してです。

この事実は当初、すべての楽団員たちにも知らされていませんでした。
初めて私たちが事実に気づいたのは、オケのメンバー全員が初顔合わせした会場でのことでした。

メンバーの顔をひと通り見ておきたいと考えた私は当日、誰よりも早く会場入りして他の人たちが来るのを待ちました。
集合時間の10分ほど前になると、入り口から楽団員たちが続々と入って来ました。
私はそれを遠巻きに見ながらも、それぞれの顔だけは目に焼き付けるように凝視しました。

「何かがおかしい…」そう気づいたのはメンバーが20人近く入ってからのことでした。
その時点で私の目に映ったのは全員が女性、年齢は20代が中心だったでしょうか。
その後も入場してきたメンバーたちは一人残らず女性で、とうとう男性はひとりも来ないまま全員の入場が終了しました。

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「どういうこと?」私と同じ疑問を感じたのか、会場に着いたメンバーたちが一斉にざわつき始めました。そこに理事長のセバスチャン・ガロが満を持してゆっくりと会場入りしました。

ざわつく私たちの疑問を察したのか、ガロ理事長は最初のあいさつもそこそこに「みなさんの疑問にお答えします」と切り出しました。

以下は理事長が当日発した言葉です。

「なぜ女性しかいないのか?みなさん、そうお思いですよね?
ごもっともです、これは少し異様な光景ですね。

オーケストラを新装するにあたって私は、女性の活躍が輝いて見えることを望みました。外国人として長年、日本で暮らしてきた私は、日本は他の国に比べて社会的にまだまだ男性優位だと感じていました。日本以外では女性の首相やリーダーは当たり前です。ですが日本では多くなってきたとは言え、まだ女性に比べて男性が実権を握っている印象があります。

そこで私はまず、指揮者とコンマスは女性にしようと決めていました。トワとレアには偶然出会ったのではありません。以前から漏れ伝わるうわさを耳にして、計画通りに現地に居合わせました。ピアノの美里も同じです。

ただオケの中心は女性で固めるとしても、楽団員全員を女性にしようとは、その時点ではまったく考えていませんでした。しかし、オーディションを進行するうちに、私は自分が思っている以上に優れた女性のプレーヤーがいることに気づきました。同時に自分の中に漠然と無意識に"でもやはり最終的には男性のほうがいい音、しっかりとした音が出せるだろう"と偏見をもっていたことにも気づいたのです。

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その時ふと『ならばいっそのこと、オケのメンバー全員を女性にしてみてはどうだろう』との思いが脳裏をよぎりました。そういうオーケストラはありそうでないですから話題にはなりそうです。またもし団員を女性だけにしてもオーケストラとして機能するのか?私自身が試してみたい気持ちがありました。」

会場の楽団員たちはひと言も発っすることなく、理事長の言葉に聞き入っていました。
さらにガロ理事長はオケを女性だけにした本当の理由を話しました。

「みなさんもご存じのように現在、ウクライナをはじめとして世界にはこれまでなかったような不穏な空気が広がっています。時には第三次世界大戦の可能性にまで触れる弁も目にするようになってきました。

戦争は攻撃と破壊などの男性的なエネルギーから成り立っています。対して平和は子供を産み育てる女性的な包容力と創造のエネルギーから成り立っています。今、世界に必要なのはまさにこの女性的なエネルギーではないでしょうか?

これ以上破壊のエネルギーが世界に充満すると、とんでもないことが起きそうな気さえします。だからこそ、今の世界にはすべてを受け入れ慈しむ女性的なエネルギーが必要なのです」

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「音楽にはそれを形にして人々に届ける力があるのではないでしょうか?音楽は目には見えないものの、政治や言語を越えて人の心に響き、動かす力があると私は信じています。

そうした女性的なエネルギーをより強く打ち出すためにも、女性のみのオーケストラを一度やってみる価値はあると私は思いました。」

理事長の言葉を聴き終えた楽団員たちは、声を発するでもなく拍手をするでもなく、ただ小刻みに小さくうなずいていました。
私も話を聞きながら、後半はややこじつけな感じがしながらも、大筋では理事長の言葉はそれほどおかしくないと思いました。

そして何より、世界でもあまり前例を見ない全員が女性のオーケストラがどんなものになるのか、好奇心のほうが大きくなっていました。
多分、私以外の楽団員たちもシンプルにその思いが強かったと思います。

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あれから数か月が過ぎ、すでにいくつかのリハーサルと本番を経てきましたが、「男性がいるオーケストラと比較しても特に物足らなさは感じない」というのが率直な感想です。
まあ、指揮者のトワさんがドイツの王道シンフォニーが得意なのも大きいと思います。どうしたって骨太な印象が増しますから。

でも私は正直に言って、ベートーヴェンとかブラームスよりラヴェルやドビュッシー、フォーレのようなフランス音楽のほうが好きです。

「音楽を聴いて反省したくない」というのが本音です。ただお洒落で透明感ある世界に身を浸すという音楽の楽しみ方があってもいいと思いませんか?
だからサティの「環境音楽」みたいな考え方には心から共感します。サティのピアノ曲は心地よくて一日中でも聴いていられます。

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そんなこともあって今回のフォーレは私がやりたいと直訴しました。とにかくフルートがメインの曲なのでやりがいがあり、演奏家冥利に尽きます。
私はこの曲を夜中に一人静かに、部屋の明かりを落としてヘッドフォンで聴くのが好きです。

あっ!でも、ベートーヴェンやブラームスも決して嫌いというわけではありませんよ。
コンサートのメインプログラムはやっぱり、ドイツの王道シンフォニーだと私は思っています。



フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」 Op.80
第3曲 シシリエンヌ [2023]
Gabriel Urbain Faure:Pelleas and Melisande Suite
3. Sicilienne [4:03]



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▼オーケストラを構成する楽団員たち
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posted by CMSL クラシック名曲サウンドライブラリー at 06:34 | 管弦楽曲 (Orchestral) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする