現在、世界は漠然とした不安に覆われています。
パンデミックは完全に終息したとは言い切れず、それに加えて今年に入ってからは、
ロシアによるウクライナ侵攻が、いつ終わるともわからない状況です。
ニュースを見れば否が応でもこうした情報は入ってきて、知らずに精神に影を落とし、
少なからず心と体に変調をきたしても決しておかしくはありません。
マイナスの感情は自分にはそのつもりはなくとも、心の奥底に住み着いて、
理由のわからない不安、焦燥感、パニック、憤りの原因になることもあります。
音楽療法ではこうした症例に対処する場合、まずは患者の状態と同調することで、
カタルシスの効果を生み、そこから少しずつ気持ちを向上させていきます。
落ち込んだ気分の時に、いきなり明るく力強い音楽を聴かされても、
かえって余計に落ち込みを強めてしまうことになり兼ねません。
この曲を作曲したラフマニノフは9歳でペテルブルク音楽院に入学し、
12歳でモスクワ音楽院に移ると在籍中にピアノ協奏曲第1番、歌劇「アレコ」、
前奏曲嬰ハ短調などを作曲。いずれも高評価を受け、天才作曲家として前途洋々でした。
また、ピアニストとしても、当時一流の腕前を誇っていました。
そんな彼が初めて挫折を味わったのは、1897年、24歳の秋のことです。
自作の交響曲第1番が酷評を買い、重度のうつ状態に陥ってしまいました。
生まれついて繊細で神経質だった彼は、大きな精神的打撃を受けました。
ピアノ協奏曲第2番には、この時の心情が色濃く反映されています。
特に第2、第3楽章に続いて最後に書き上げられた第1楽章には、
救いの見えない苦しい心境が、主題を奏でる弦楽器群の低音にも表れています。
この楽章で彼は自らのマイナス感情と徹底的に対峙しています。
見て見ぬふりを続ける限りそうした感情はくすぶり続けますが、
自身がしっかり見て認知するだけで、次第に効力を失っていきます。
精神科の博士で音楽愛好家でもあったニコライ・ダールはラフマニノフに、
この状態を乗り越え、協奏曲の傑作を書くという暗示を与えました。
4ヶ月に及ぶ連日の治療が功を奏し、ラフマニノフは徐々に意欲を取り戻し始め、
ついにはピアノ協奏曲の不朽の名作、第2番ハ短調を完成させたのです。
*ベルリンフィルハーモニー大ホールのステージから20m付近の音響を採用しています。
*強奏時にオケの音が混濁しないように、金管を抑えるなどの変更を行っています。
*演奏の全体を見渡せるように展開部の速度を落としています。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 Op.18 第1楽章 [2022]
Sergey Rachmaninov:Piano Concerto No.2 in C minor, Op.18
I. Allegro moderato [11:19]
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Rachmaninov-PianoConcerto-No2-1st-2022.mp3
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