ベートーヴェン、ワーグナー、ブルックナー、ブラームスなど、ドイツ・オーストリア系の偉大な管弦楽曲の系譜を継ぐ名作です。
この曲には上記の作曲家たちの最良の部分が濃縮されており、それでいながら巨大な管弦楽を巧みに駆使したシュトラウス自身の力量も示されています。
シュトラウスには優れた交響詩が多くありますが、そのどれとも違う異質な次元の音楽です。
題材はシュトラウスをワーグナーに開眼させたマイニンゲンのヴァイオリニスト、アレキサンドル・リッテルの詩に基づくとされますが、実際はシュトラウスの音楽をリッテルがあとから詩に置き換えたとも言われています。
― ひとつの灯火しかない淋しいみじめな部屋に病人が寝ている。
死が沈黙のうちに彼の元へと近づいてくる。
彼は死の苦悶に悶えながら、それに対し必死に抵抗する。
そして激しい闘いの果てに、かすかな光と共にあの世の世界が開けてくる。
その浄らかな光明に病人は両手を伸ばしつつ息を絶つ。
しかし横たわる彼の顔は崇厳な微笑を湛えていた…
「死と変容」には現世に執着し、欲望の中に迷い苦しむ人間(肉体)の姿と、浄化された精神的な存在(意識)としての姿が対照的に描かれています。
それは極めて宗教的な世界観で、仏教が示す泥沼の現世と、そこから茎を伸ばし大輪の花を咲かせる蓮の花のようでもあります。
晩年、死の床で昏睡状態に陥ったシュトラウスは、意識を取り戻したあとに「私が『死と変容』の中で作曲したことは全て正確だったと、今こそ言うことができる。私は今しがたそれを文字通り体験してきたのだよ」と妻子に語ったと言います。
*演奏内容と音響(アルゴリズムリバーブ)を改めた新録音です。昨年公開の音源ではオーケストラの音が混然一体と成り過ぎていましたが、弦楽器と管楽器を分けて録音した結果、サウンドがよりクリアになりました。
リヒャルト・シュトラウス:交響詩 《死と変容》 Op.24 [2020][AR]
Richard Strauss:Tod und Verklarung Op.24 [26:44]
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RichardStrauss-Tod-und-Verklarung-2020-AR2.mp3
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