2012年02月06日


ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》 第1幕への前奏曲

ワーグナー:トリスタンとイゾルデ 全曲
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レビュー平均: 5.0点 (1人がレビュー投稿)
5.0点 最高の名演を最高の音質で
発売日:2011-06-22
メーカー:EMIミュージックジャパン
クリエーター:フルトヴェングラー(ヴィルヘルム)(指揮)

♪現代音楽へのマイルストーンとなった“トリスタン和音”


この作曲家がこれで何をしようとしていたのか、
いまだにほんの少しでさえもわからないということを、私は告白せねばなりません
− H.ベルリオーズ

この曲の最初の一音は、ダ・ヴィンチのどんな芸術の魔力をも失わせてしまう
− F.ニーチェ


楽劇『トリスタンとイゾルデ』の音楽史における存在の意味合いには、
短い文面では説明できないほど、計り知れなく大きいものがあります。
そしてそれが集約されたのが、全曲に先立って演奏される第1幕への前奏曲です。

トリスタン和音と呼ばれる和音があります。
これは前奏曲の冒頭で現れる、F、B、D#、G#から構成される和音(0:06)ですが、
理論的に解決されないまま、次のフレーズへと進んでしまうので、
音楽史的には調性の崩壊につながったとされているのです。

また、古典的機能和声の崩壊にも影響を与えた半音階の多用や、
終止音を避けて延々と続く「無限旋律」など、トリスタンとイゾルデには
それまでに無かった斬新な試みが盛り込まれています。
このため音楽史上のひとつの里程標と見なされているのです。

作曲時に報われぬ恋愛関係にあったマティルデ・ヴェーゼンドンクに当てた書面で、
ワーグナーは前奏曲についての表題的解釈を、次のように書き記しています。


…そこで彼はただ一度だけ、しかし長く分節された一つの線で、
もっとも控えめな告白と、もっとも儚い献身から始め、不安な溜息、希望と畏れ、
嘆きと望み、歓喜と苦悩をへて、もっとも強い衝動、もっとも激しい努力へと、
その満たされることのない欲求を高めていった。
それは途方もなく熱望する心に、無限の愛の歓喜の海へ到達する道を開き、
突破口を見いだそうとする欲求である。


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マティルデは自分を擁護するパトロン、ヴェーゼンドンクの若き妻であり、
ワーグナー自身にもミンナという連れ添った妻がありました。
どれほど互いに惹かれようとも、決して成就することのない恋愛の苦しみと、
マティルデへの焦がれるような思いが、途切れることのない旋律となり、
解決しない不協和音となり、形式を超えた音楽へと結実していったのです。

そして、トリスタンとイゾルデの圧倒的な魔力と極限的な感情表現は、
その後の芸術家たちの創造活動に、大きな影響を及ぼし続けたのです。

第1幕への前奏曲と終幕のクライマックスを飾る「イゾルデの愛の死」は、
ワーグナーが先行演奏会でこの2曲を取り上げたことにちなみ、
現在でも「前奏曲と愛の死」と題し、連結したひとつの曲として演奏されています。





ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》 第1幕への前奏曲
Richard Wagner:Tristan und Isolde Prelude to Act 1



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posted by CMSL クラシック名曲サウンドライブラリー at 14:16 | 歌劇 (Opera) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする