2022年09月25日


ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 Op.18 第1楽章 [2022] / Sergey Rachmaninov:Piano Concerto No.2 in C minor, Op.18:I. Allegro moderato

Rachmaninoff-04.jpg♪自身の内面に潜む闇と徹底的に対峙

現在、世界は漠然とした不安に覆われています。
パンデミックは完全に終息したとは言い切れず、それに加えて今年に入ってからは、
ロシアによるウクライナ侵攻が、いつ終わるともわからない状況です。

ニュースを見れば否が応でもこうした情報は入ってきて、知らずに精神に影を落とし、
少なからず心と体に変調をきたしても決しておかしくはありません。

マイナスの感情は自分にはそのつもりはなくとも、心の奥底に住み着いて、
理由のわからない不安、焦燥感、パニック、憤りの原因になることもあります。

音楽療法ではこうした症例に対処する場合、まずは患者の状態と同調することで、
カタルシスの効果を生み、そこから少しずつ気持ちを向上させていきます。
落ち込んだ気分の時に、いきなり明るく力強い音楽を聴かされても、
かえって余計に落ち込みを強めてしまうことになり兼ねません。

この曲を作曲したラフマニノフは9歳でペテルブルク音楽院に入学し、
12歳でモスクワ音楽院に移ると在籍中にピアノ協奏曲第1番、歌劇「アレコ」、
前奏曲嬰ハ短調などを作曲。いずれも高評価を受け、天才作曲家として前途洋々でした。
また、ピアニストとしても、当時一流の腕前を誇っていました。

そんな彼が初めて挫折を味わったのは、1897年、24歳の秋のことです。
自作の交響曲第1番が酷評を買い、重度のうつ状態に陥ってしまいました。
生まれついて繊細で神経質だった彼は、大きな精神的打撃を受けました。




ピアノ協奏曲第2番には、この時の心情が色濃く反映されています。
特に第2、第3楽章に続いて最後に書き上げられた第1楽章には、
救いの見えない苦しい心境が、主題を奏でる弦楽器群の低音にも表れています。

この楽章で彼は自らのマイナス感情と徹底的に対峙しています。
見て見ぬふりを続ける限りそうした感情はくすぶり続けますが、
自身がしっかり見て認知するだけで、次第に効力を失っていきます。

精神科の博士で音楽愛好家でもあったニコライ・ダールはラフマニノフに、
この状態を乗り越え、協奏曲の傑作を書くという暗示を与えました。
4ヶ月に及ぶ連日の治療が功を奏し、ラフマニノフは徐々に意欲を取り戻し始め、
ついにはピアノ協奏曲の不朽の名作、第2番ハ短調を完成させたのです。

*ベルリンフィルハーモニー大ホールのステージから20m付近の音響を採用しています。
*強奏時にオケの音が混濁しないように、金管を抑えるなどの変更を行っています。
*演奏の全体を見渡せるように展開部の速度を落としています。


ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 Op.18 第1楽章 [2022]
Sergey Rachmaninov:Piano Concerto No.2 in C minor, Op.18
I. Allegro moderato [11:19]



Rachmaninov-PianoConcerto-No2-1st-2022.mp3



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2022年09月11日


モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」第4楽章 [2022] / W.A.Mozart:Symphony No.41 in C major, K.551 "Jupiter":IV. Molto allegro

mozart-04.jpg♪力強く確信に満ちたモーツァルト最後の交響曲の最終楽章

もし交響曲を音楽の集大成と考えるなら、
41番はモーツァルトの音楽人生の総決算と言えるかもしれません。

モーツァルトにとって最後の交響曲となった「ジュピター」。

その最終楽章は例えようもなく神々しく煌びやかで、
あたかも天使たちが乱舞する天上世界を進みゆくかのようです。

前作の40番は肉体的にも経済的にも厳しかった、
モーツァルトの実生活を反映したかのような短調の交響曲でした。



しかし41番にはそれを打ち消すような明るさ、力強さがあります。

管楽器が順にコラールを奏でる部分は、まるで天国の門が開かれ、
その先に待つ神の面前に歩み出るようなイメージが広がります。

その後も音楽は迷いなき行進を続け、確信に満ちたまま全曲を締めくくります。

*公開していた第1楽章の音響・演奏内容を修正して差し替えました。
ベルリンフィルハーモニー大ホールのステージから20m付近の音響を採用しています。


モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」第4楽章 [2022]
W.A.Mozart:Symphony No.41 in C major, K.551 "Jupiter"
IV. Molto allegro [7:48]




Mozart-Symphony-No41-Jupiter-4th-2022.mp3



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