2013年09月22日


ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op.68 第4楽章 [新録音2013]

ブラームス:交響曲第1番
4.0 古典的な形式美とロマンティックな楽想の融合
5.0 フルトヴェングラーのブラームスの代表盤
5.0 すばらしい。存分に味わえる!
価格:
EMIミュージックジャパン(2009-05-20)
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♪暗闇の彼方から光差す、希望の第4楽章

完成までに21年の歳月を要したこの交響曲。
年齢にしてブラームスが22歳から43歳までという、異例の長さが費やされました。
そしてそのうちの14年近くが、第4楽章の作曲に宛がわれています。

前の3つの楽章は29歳までにほぼ構想としてのスケッチができていましたが、
この交響曲の結論である、劇的で壮大な第4楽章の完成には、
作曲家としても人間としても、まだまだ時が必要だったということでしょう。

この交響曲はホールの杮落としなど、メモリアルな場面でよく使用されています。
渋谷のオーチャードホールの杮落としは、岩城宏之さん指揮による、
シューベルトの未完成とブラームスの第1番がメインプログラムでした。

また、小澤征爾さん指揮のサイトウキネンオーケストラの立ち上げの際にも、
チャイコフスキーの弦楽セレナーデと共に、この曲が取り上げられました。

古くはシャルル・ミュンシュが創設後のパリ管弦楽団を振って最初に録音したものが、
自国のベルリオーズの幻想交響曲と共に、不朽の名演として知られているほか、
近年でも「のだめカンタービレ」の主人公、千秋真一名義で発売されたCD盤に、
このブラームス交響曲第1番がメインとして収められていました。

このように、ことあるごとに取り上げられる理由としては、この曲がベートーヴェンの
意志を継ぐものであり、「運命」「第九」をあわせもつ内容であることが挙げられます。
「第九」も杮落としでよく演奏されますが、ブラームスの1番の場合、
合唱団を必要とせず、器楽のみで成立する点も大きいと思われます。
そして希望あふれるフィナーレが、新しいことの始まりにぴったりなのです。

個人的なことになりますが、このライブラリーを開設するにあたって、
最も力を入れて取り組みたかったのが、ブラームスの第1番でした。
おそらく最も多くの種類のCDを所有しているのもこの曲です。

最初はブルーノ・ワルター指揮・コロンビア交響楽団を聴き込みました。
今でもこの演奏は、誰もが安心して聴けるスタンダードだと思っています。

続いて前述の、ミュンシュ指揮・パリ管弦楽団をよく聴きました。
フランスの指揮者、楽団とは思えないドイツ的で重厚な響きで、死の迫ったミュンシュの
神懸かった熱演は、幾多のクラシック名演の中でも特別なものだと思います。
それより以前のボストン交響楽団との録音は、別人のようなノーマルな演奏でした。

そしてもっとも多く聴いたのは、カラヤン指揮・ベルリンフィルの最後の録音です。
この演奏による第4楽章は、「こうでなくては」と思わせる表現のスタイルが随所にあり、
ワルターとは違った意味で、この曲のスタンダードだと考えています。

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カラヤンの若い頃の演奏もいいですが、87年のこの録音はいい感じに崩れていて、
それが、きれいごとではない、演奏の真摯さにつながっています。
第1楽章冒頭のティンパ二が、これほどダイナミックに響いた演奏をほかに知りません。
サウンドに関するカラヤンの才能には、ただただ脱帽するばかりです。

最後にフルトヴェングラー指揮・ウィーンフィルの52年の録音ですが、
これに限らずフルトヴェングラーの演奏を持ち出してしまうと、
あまりの次元の違いに他が霞んでしまい、話が終わるので困ってしまいます。
特にこの曲は彼の芸風と完全にマッチしていて、他の追随を許しません。
もし、高音質のステレオ録音が存在したら、もうそれ以外は必要ないという程です。
ある意味、フルトヴェングラーがモノラル時代の人でよかった、と思ってしまいます。


*先週の始めのこと、猛威を振るった台風18号一過の、とある海辺を訪れると、
曇り空から久しぶりの太陽が姿を現し、その光がキラキラと海面に反射して輝いていました。
その光景はあたかも、第4楽章の有名なホルンの主題の場面を思わせました。
背後のヴァイオリンはまさしく、きらめく無数のさざ波です。
あれほどの嵐がうそのように、海はどこまでも穏やかでした。

人生も同じようなものかもしれません。
どんなに絶望的に思えても、必ずいつかは光が射す。
この世界に100% の絶望などないんだ。
その背後には必ず、来たるべき希望が待っている… そんなことを感じました。

ですからもし、今、困難に直面している方がいても、決してあきらめずに、
心に“希望の光”を灯し続けていただけたらと思います。
そんな願いを込めて、今回、新たにゼロから制作、録音させていただきました。





ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op.68 第4楽章 [新録音2013] [17:13]
Johannes Brahms:Symphony No.1 in Cminor, Op.68
4. Adagio - Piu andante - Allegro non troppo, ma con brio



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2013年09月01日


ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op.68 第1楽章 [新録音2013]

ブラームス:交響曲第1番
5.0 別物!!
4.0 非常に魅力的な音質です!
5.0 再生機専用で聴くCD。
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ミュンシュ(シャルル)
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♪完成までに21年の歳月を費やした不滅の交響曲

クラシック音楽は不思議です。
時代は流れ、その間、音楽の流行りも次々と入れ替わっていけども、
クラシックの名曲とされる作品たちは、世の流れに関係なく、
人々に聴き継がれ、愛され、生活を潤し、生きる希望を与え続けているのです。

しかもそうした作曲家たちの主要な作品の数々は、
すでに大半の著作権が切れ、譜面(作品)自体は自由に扱うことができるのです。
よく考えると、これは驚くべきことです。

クラシックの主流は大きく分けて、イタリアとドイツ・オーストリアになると思います。
イタリアはヴィヴァルディのバロックに始まり、ヴェルディのオペラに極まりました。
ドイツでは音楽の父・J.S.バッハが、対位法などの音楽の基礎を形造り、
その後、古典派のベートーヴェン、後期ロマン派のブラームスを生み出しました。

J.S.バッハ、ベートーヴェン、ブラームス。
この3人が、言わずと知れた“ドイツ3大B”です。
そして、ベートーヴェンの後継者といわれたブラームスの作品の中でも、
一際、崇高な輝きを放ち続けるのが、作曲に21年の歳月を費やした交響曲第1番です。

ハンガリー舞曲や、ドイツレクイエムによって、すでに不動の地位を得ていたブラームスも、
こと、交響曲の作曲においては、慎重に慎重を期する周到さでした。
着手から8年後には、前の3つの楽章のスケッチはほぼできていたものの、
そこから最終楽章を完成させるまでに、更に13年という長い期間を要したのです。

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ブラームスはベートーヴェンを心から尊敬していました。
ですから、ベートーヴェンの作品の中でも特に重要とされる交響曲というジャンルにおいて、
恥ずかしいものを残すことは断じて許されなかったのです。
交響曲を作曲するのであれば、ベートーヴェンを超えなければ意味がない、
というのが、ブラームスの変わらぬ真情でした。

そんなブラームスが43歳にして、満を持して送り出したのが交響曲第1番なのです。
ベートーヴェンを意識し続けた結果、これ以上なくベートーヴェン的な音楽になりました。
旋律や和声などはたしかに後期ロマン派のブラームスのものですが、
古典的な外形や、何より精神性がベートーヴェンそのものです。

ハ短調の悲劇的な導入に始まり、やがてハ長調の完全な勝利に至るという経緯は、
ベートーヴェンの交響曲第5番《運命》と同じである上、第4楽章には、
どう聴いても第9の歓喜の歌を思わせる主要主題が登場します。
第三者であるブラームスがベートーヴェンらしさを追及した結果、
ベートーヴェン以上にベートーヴェンらしさが凝縮された作品…それが第1交響曲なのです。





ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op.68 第1楽章 [新録音2013] [13:22]
Johannes Brahms:Symphony No.1 in Cminor, Op.68
1. Un poco sostenuto - Allegro



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