2013年01月30日


ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 Op.92 第2楽章 [リスト編曲]

ベートーヴェン(リスト編)交響曲第7番
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プロダクトタイプ:ABIS_MUSIC
アーティスト:伊藤憲孝

♪対となる2つの旋律が織り成す美しくも厳粛な世界

リストは自分以外の様々な作曲家の作品を、ピアノ用に多数アレンジしました。
ベートーヴェンを始めとしてシューベルト、ベルリオーズ、ワーグナーなど、
主に元は管弦楽作品だったものを、ピアノ一台用に編曲を施しています。
そして、リストのこの作業は一般に“トランスクリプション”と呼ばれています。

有名な「愛の夢 第3番」は、元はソプラノ用の歌曲でしたが、
これも自身によってピアノ編曲されたトランスクリプション作品のひとつです。

トランスクリプションとは簡単に言えば編曲(アレンジ)の一形態です。
記譜されていない曲や音を記譜するという意味があるほか、
ある楽器または楽器群のために書かれた楽曲を、
異なる楽器または楽器群での演奏用に編曲することも意味しています。
リストの場合は後者の意味です。

そしてリストのトランスクリプションの中でも特によく知られるのが、
ベートーヴェンの全9曲の交響曲を手がけたS.464の作品群です。
多数の作曲家の作品から散発的に取り上げた、他のトランスクリプションと違い、
この9曲に対しては隙なくコンプリートさせようという意気込みが感じられます。
そして実際に9曲の全楽章を、ひとつも欠けることなく仕上げています。

ベートーヴェンの交響曲はオーケストラそのままの形で聴くべきだ、
なぜ、わざわざピアノ用に編曲して聴く必要があるのか?
という考え方もあるかもしれません。

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しかし、当時は一般の人々がフルオーケストラに触れる機会は少なく、
こうしてピアノで弾ければ、より身近に親しめたという意味もあります。
また、ピアノにアレンジしたものを聴くことで、
オーケストラ版では見えなかったことに気づくという点もあります。

今回の第7交響曲のアレグレットでも、複数の旋律が緻密に絡み合う様が、
ピアノの繊細な音色によって、よりくっきりと前に出ているのがわかります。
リストはそういったことも考慮しながら、どうしたらベートーヴェンの交響曲を
ピアノ一台で表現できるのか?と工夫を重ねながら作品を書き上げているのです。





ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 Op.92 第2楽章 [リスト編曲] [9:14]
L.V.Beethoven:Symphony No.7 in A major, Op.92
2. Allegretto [Liszt arr.]



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2013年01月26日


サン=サーンス:組曲《動物の謝肉祭》から 第1曲 『序奏と獅子王の行進曲』

サン=サーンス:動物の謝肉祭
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5.0点 『白鳥』はミッシャ・マイスキーのためにある
5.0点 踊りたくなってしまう
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アーティスト:アルゲリッチ(マルタ) バシュキローヴァ(エレナ)
クレーメル(ギドン)

♪動物たちの様々な生態をユーモラスに描いた組曲

1886年、サン=サーンスが51歳の時のことです。
すでに一流作曲家として認められていた彼は、愛らしいひとつの組曲を作りました。
様々な動物たちの生態を、音楽で描いた作品として有名な『動物の謝肉祭』です。

この年の始めにプラハとウィーンへ演奏旅行に出かけたサン=サーンスは、
オーストリアのクルディムという田舎町で、数日間の休暇を過ごしました。

この地で世話になった友人のチェリスト、シャルル・ルプークは、
自身が主宰する毎年の謝肉祭で催す音楽会のために、
新曲を作曲してくれるようサン=サーンスに依頼しました。
そこで彼は訪れた聴衆を驚かそうと、この作品を作ったといわれています。

「動物園の大幻想曲」という副題が示すとおり、
この組曲には実に様々な種類の生き物たちがユーモラスに登場します。
その中には人間も含まれていて、第11曲の「ピアニスト」では、
チェルニーの練習曲さえろくに弾けないピアニストの姿が描かれています。

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また曲の中には当時の人々に知られた名曲の数々が断片的に織り込まれ、
それがこの組曲のユーモアや面白さをひろげています。
例えば第4曲の「亀」には有名なオッフェンバックの『天国と地獄』序曲の
フレーズの一部が登場し、亀が這うようにノロノロと演奏されるといった具合です。

サン=サーンスは『動物の謝肉祭』を、余興程度にしか考えていなかったようで、
特に出版しようとはしませんでしたが、「白鳥」だけは個別に出版していました。
やはり本人もこの曲だけは特別だと思っていたようです。

組曲の全曲が友人たちの手にによって出版されたのは、
サン=サーンスが亡くなった翌年にあたる1922年のことでした。





サン=サーンス:組曲《動物の謝肉祭》から 第1曲 『序奏と獅子王の行進曲』 [2:08]
C.Saint-Saens:Carnival of the Animals Grand Zoological Fantasy
1. Introduction and Royal March of the Lion



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2013年01月23日


リスト:超絶技巧練習曲 第9番 変イ長調 『回想』 S.139

リスト:超絶技巧練習曲
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5.0点 聴かせる大人の練習曲
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アーティスト:アラウ(クラウディオ)

♪リストの女性的な側面が表れた夢見るような旋律

『(リストの回想は)黄色く変色したラブレターの束である』
                        - フェルッチョ・ブゾーニ

あたかもショパンを思わせるかのような、ロマン性にあふれる作品です。
その女性的で繊細な旋律美から、ショパンに影響されたともいわれるほどですが、
実はこの作品の原型が収められた『12のピアノのための練習曲』が出版されたのは、
1826年、リストがまだ15歳の青年だった頃のこと。

この時すでにリストはパリで天才ピアニストとして持て囃されていましたが、
ショパンがポーランドを離れ、パリへとやって来たのは1831年です。
つまり、『回想』が生まれた時には、おそらくリストはショパンを知りませんでした。

にも関わらず、こうした夢見るような旋律をリストは紡いでいました。
女性的なショパンに対して、男性的なリストという構図で見られがちですが、
『愛の夢』もそうであるように、リストにも女性的な側面はありました。
またショパンにも『英雄ポロネーズ』のような男性的な側面もあったのです。

難曲として名高いリストの12の超絶技巧練習曲集は、先述の通り、
まず1826年に初版がマルセイユのボアズローから出版され、
次いで1837年には、ジュレンジンガー社から第2版が出版されています。
そして更に、1852年には2度目の改訂となる最終版がまとめ上げられ、
これが現在私たちが知る『超絶技巧練習曲集』の完成作になっています。

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原題の『transcendante(超越)』という言葉には宗教的な意味があり、
肉体・精神・魂のすべてを超越するというのが最も近いニュアンスとされます。
晩年にはアッシジのフランシスに帰依し、4つの僧位を受けたほどのリストが、
『transcendante』という題に深い意味合いを込めたことは想像に難くありません。

リストは音楽家としてピアノの演奏技巧を極めることを通じて、
人間としての精神の高みをも極めることをめざしたのかもしれません。

尚、ディズニー映画『シンデレラ』の『A Dream Is A Wish Your Heart Makes』は、
リストの『回想』の主題が元になっているともいわれています。





リスト:超絶技巧練習曲 第9番 変イ長調 『回想』 S.139 [8:42]
Franz Liszt:Transcendental Études No.9 in A-flat major, S.139 "Ricordanza"



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2013年01月08日


スメタナ:交響詩 《モルダウ》 (『わが祖国』より) [新録音2013]

スメタナ:わが祖国(全曲)
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レビュー平均: 4.7点 (6人がレビュー投稿)
5.0点 わくわくと心躍る『わが祖国』の演奏。
5.0点 祖国ボヘミアへの熱烈な賛美と愛情
5.0点 聴く度に身震いがして来よる演奏
発売日:2006-01-18
メーカー:コロムビアミュージックエンタテインメント
アーティスト:アンチェル(カレル)

♪ボヘミア国民主義音楽の礎を築いた愛国心に満ちた作曲家

スメタナはボヘミア国民主義音楽の祖と呼ばれる19世紀の作曲家です。
1824年3月2日にチェコで生まれ、5歳で四重奏曲の演奏に加わり、
6歳で早くもピアニストとして、公衆の面前に姿を現していました。

作曲をモーツァルトに、ピアノをリストに習おうと決心していた青年スメタナは、
父親の意に背いてプラハに向かい、そこでカテリーナという少女と出会います。
二重奏を組んだ二人はそれで生計を立て、やがて恋仲になっていきました。

カテリーナの勧めで師事したヨーゼフ・プロクシは、
スメタナの才能を認め、無報酬で彼に音楽を教授しました。
やがてレオポルド・タン伯爵家の家つき楽長に就任したスメタナは、
これをきっかけに音楽家としての道を順調に歩み始めるのです。

当時のボヘミアは16世紀から続くオーストリアの統治下にありました。
しかし、19世紀初頭にヨーロッパに勃興した、国民主義的風潮はボヘミアにも及び、
ボヘミアは独立をめざす民族運動を起こしました。
これに動かされたスメタナは、1848年に革命学生部隊の行進曲を書き、
この結果、要注意人物として官憲に睨まれ、スウェーデンに走ったのです。

1856年、スウェーデンのゴーテボルクの音楽協会の指揮者に就任。
ここで成功を収めたものの、カテリーナは北の地で帰らぬ人となりました。
この間の1859年、オーストリアが仏伊連合軍に敗れて風向きが変わり、
国民が芸術意欲を取り戻したボヘミアへと、スメタナは1861年に帰って行きました。

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故国に戻ったスメタナは、最終的に8作となる国民歌劇の創作に乗り出し、
1863年に「ボヘミアのブランデンブルク家の人々」を、続いて1866年には代表作、
「売られた花嫁」を完成させ、国民の圧倒的支持を受けました。

しかし、1870年ごろからスメタナの耳は病に冒され始め、
ついにはベートーヴェンと同じく、まったく聴覚を失ってしまいます。
こうした苦難の中、書き上げられたのが、6曲からなる連作交響詩「わが祖国」です。

この中でも特に知られる第2曲「モルダウ」は、スマヴァの森に源を発し、
旧跡に富む山々の裾を通ってプラハを貫け、やがて海へと至る大河のことです。
木の葉から滴る水の音がピチカートで示され、それは徐々に集まって流れとなり、
水かさを増しながら奔流は森の側を通り過ぎて行きます。

聴こえてくるのは狩猟のラッパの響き、そして山裾には牧場や畑も見えてきます。
村では農民の結婚式が行われ、歌や踊りに宴もたけなわです。
やがて日が暮れると月光にきらめく水面には、水の精たちが密やかに舞っています。

再び流れを取り戻した奔流は、岩間に当たって砕ける激流となり、
それが収まると川幅を広げ、古き名城を映しながらプラハの都を貫け、
草原の彼方、遥かな海へと流れ去って行くのです。

交響詩「わが祖国」の完成後のスメタナは、歌劇「接吻」などの作品を書きましたが、
1884年5月12日、プラハの精神病院で息を引き取りました。
彼が残したボヘミア国民主義音楽は、ドヴォルザークなどによって
さらに発展し、立派に受け継がれていったのでした。


スメタナ:交響詩 《モルダウ》 (わが祖国より) [新録音2013] [13:48]
Bedrich Smetana:The Moldau (Vltava) from "My Country"

https://classical-sound.up.seesaa.net/Smetana-The-Moldau-2013.mp3



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