2012年07月27日


レハール:ワルツ 《金と銀》 Op.79

ウィンナ・ワルツ・コンサート
定価:¥ 1,050
新品最安価格:34%OFF ¥ 690 (8店出品)
5.0点 最高の「金と銀」
3.0点 金と銀
発売日:2002-06-21
メーカー:コロムビアミュージックエンタテインメント
アーティスト:ケンペ(ルドルフ)

♪稀代の旋律作家レハールの魅力がつまった名ワルツ

フランツ・レハールはハンガリーのコマーロム出身の作曲家です。
作曲のジャンルは交響詩やピアノソナタを含め、多岐にわたりましたが、
何と言ってもオペレッタでの成功が圧倒的です。
ヨハン・シュトラウス2世以降、最大にして最後の喜歌劇作曲家ともいえます。

1870年生まれのレハールは、吹奏楽団の隊長だった父から音楽を習い、
1882年から1888年まではプラハ音楽院に学びました。
そこで作曲した二つのピアノソナタがドヴォルザークの目にとまり、
作曲家になることを勧められました。

卒業後はエルベルフェルトの劇場の管弦楽団で第一ヴァイオリンを弾き、
その後は作曲の時間を作るため、父の楽団の楽長次席となり、
二十歳となった1890年からは、各地の楽団の指揮者を務めました。
そして1902年に喜歌劇「ウィーンの女」がヒットしたことを機に、
いよいよ作曲家としての道を本格的に歩み始めたのでした。

喜歌劇やそこから編曲のワルツなどが有名なレハールですが、
『金と銀』は始めから独立した管弦楽曲として作曲されたワルツです。
1902年の謝肉祭の間に催された、ある舞踏会のために作曲されました。
主催は当時のウィーン社交界の中心人物であったパウリーネ・メッテルニヒ侯爵夫人。

彼女は毎年、謝肉祭で開かれる舞踏会にテーマをつけていました。
レハールが作曲の依頼を受けた、その年のテーマは「金と銀」。
会場は銀色に照らされ、天井には金色の星が煌き、壁一面に金銀の飾りが付けられ、
参加者も金銀に彩られた思い思いの装飾を纏っていたと伝えられています。

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1902年1月27日に開催された舞踏会でお披露目されたワルツ『金と銀』は、
当初はウィーンでもあまり話題になりませんでしたが、譜面が出版されるとその年には、
ロンドン、ニューヨーク、パリ、ベルリン、モスクワとたちまち大ヒットを記録。
今日ではレハールの代表作として、また代表的なウィンナワルツとして世界中で愛され、
ヨハン・シュトラウス2世等の作品と共によく演奏されています。

魅力的な旋律が次々と並ぶ様は、師匠のドヴォルザークに勝るとも劣らずで、
類まれなメロディーメイカーとしての実力が存分に発揮されています。
シュトラウスの「美しく青きドナウ」と頂点を二分するワルツと言えましょう。





レハール:ワルツ 《金と銀》 Op.79
Franz Lehár:Walzer Gold und Silber Op.79



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2012年07月19日


リヒャルト・シュトラウス:ツァラトゥストラはかく語りき Op.30 1. 導入部 [2012]

R.シュトラウス:ツァラトゥストラはかく語りき、ドン・ファン
定価:¥ 1,800
新品最安価格:12%OFF ¥ 1,572 (6店出品)
中古最安価格:13%OFF ¥ 1,562 (1店出品)
発売日:2011-09-07
メーカー:ユニバーサル ミュージック クラシック
アーティスト:カラヤン(ヘルベルト・フォン)
時間:70(分)

♪ニーチェの未完の詩作から得たインスピレーションによって作曲

「ツァラトゥストラはかく語りき」は、ドイツの哲学者ニーチェの未完の哲学的詩作です。
主人公のツァラトゥストラはゾロアスター教の開祖とされるペルシャの伝説的人物。
彼は13歳で故郷を捨て山に入り、10年間の瞑想生活を過ごします。
そしてある朝、日の出と共に目覚め、太陽に悟りを得たことを告げるのです。

山を降りた彼は俗界に帰り、予言者として新たな思想を説き始めます。
自分の知恵を人間のおごりが謙虚になるまで、不満足が満足になるまで
分け与えたいと考えるこの主人公こそが、他ならぬニーチェ自身の象徴であり、
「ツァラトゥストラはかく語りき」は、ニーチェの哲学的思索の集大成とも言える作品なのです。

若い頃、ミュンヘンの大学で哲学を専攻し、ニーチェの思想に共鳴したシュトラウスは、
「ツァラトゥストラ」に感銘を受け、そこから得た霊感を元に1曲の管弦楽曲を書き上げました。
それが標題を「ツァラトゥストラはかく語りき」とした、作品30の交響詩です。

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シュトラウスはスコアの冒頭に、ニーチェの原著から序文を掲げていますが、
この交響詩はニーチェの著作の音楽化を試みたのではなく、
シュトラウス自身の言葉によれば、「人類の発展の観念がその起源から様々な経過をたどり、
ニーチェの超人の観念に至るまでを音楽で表そうとした」作品です。
シュトラウスは標題に添えて「ニーチェに自由に従った」とも記しています。

この交響詩は導入部と8つの章で構成され、切れ目なく演奏されます。

1. Einleitung (導入部)
2. Von den Hinterweltlern (世界の背後を説く者について)
3. Von der großen sehnsucht (大いなる憧れについて)
4. Von den Freuden und Leidenschaften (喜びと情熱について)
5. Das Grablied (墓場の歌)
6. Von der Wissenschaft (学問について)
7. Der Genesende (病より癒え行く者)
8. Das Tanzlied (舞踏の歌)
9. Nachtwandlerlied (夜の流離い人の歌)

1896年の2月にミュンヘンで作曲が始まり、同年の8月24日に完成。
11月27日に、フランクフルトの博物館協会のコンサートにおいて、
シュトラウス自身の指揮によって初演され、大きな反響と反論を呼びました。

導入部が映画「2001年宇宙の旅」で使用され、一躍有名になったのはご存知の通り。
当初、レコード会社の意向により指揮者・演奏団体が伏せられたため、
カール・ベーム指揮、ベルリン・フィルハーモニーの演奏がサントラ盤に収録されていましたが、
実際はカラヤン指揮のウィーン・フィルハーモニーの演奏で、後年サントラも入れ替えられました。

録音の会場となったウィーンのゾフィエンザールにオルガンがなかったため、
導入部最後のパイプオルガンの和音は、郊外の教会で別録りしてミックスされました。
ウィーン・フィルとの共演を望み、デッカの録音技術に惚れ込んでいたカラヤンが、
それまで専属だったEMIからデッカに移籍して最初の録音がこの作品でした。

*楽曲ファイルは演奏と音響を改めた新録音です。





リヒャルト・シュトラウス:ツァラトゥストラはかく語りき Op.30 1. 導入部 [新録音2012]
Richard Strauss:Also sprach Zarathustra Op.30
1. Einleitung



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2012年07月15日


リヒャルト・シュトラウス:アルプス交響曲 Op.64 1. 夜 - 2. 日の出 - 3. 登り道

R.シュトラウス:アルプス交響曲
定価:¥ 1,800
新品最安価格:13%OFF ¥ 1,562 (10店出品)
中古最安価格:44%OFF ¥ 1,000 (3店出品)
レビュー平均: 5.0点 (1 人がレビュー投稿)
5.0点 気宇壮大
発売日:2011-05-11
メーカー:ユニバーサル ミュージック クラシック
アーティスト:カラヤン(ヘルベルト・フォン)

♪アルプス登山の過程を細やかに描いた標題交響曲

「アルプス交響曲」はリヒャルト・シュトラウスの最後の交響楽的作品です。
「ドン・ファン」から始まった交響詩の作曲は「英雄の生涯」で終わり、
その後は「家庭交響曲」「アルプス交響曲」という二つの交響曲を残しています。

ドイツ・アルプスのツークシュピッツェに登山をした14(15)歳時のシュトラウス少年は、
大自然の雄大さに感銘を受け、それがこの交響曲の元イメージになっているといわれます。
1902年にはこれがより具体的な形になり、信奉するニーチェの思想である、
「非キリスト教的自然」や「山で生きる」生き方、「自然のなかでの解放」に基づき、
「アンチクリスト-アルプス交響曲」という4楽章の大交響曲が構想されました。

1911年春にシュトラウスはガルミッシュ=パルテンキルヒェンの山荘にて、
この作品を単一楽章の交響曲に再構成する作業を始めました。
そして1914年から本格的な作曲に取り掛かかり、1915年2月に全曲が完成しました。

初演は1915年10月28日に、シュトラウス指揮のドレスデン・シュターツカペレによって、
ベルリンの旧フィルハーモニーにて行われました。
評論家には不評でしたが、大衆からは熱狂的な支持を受けたと伝えられます。

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この交響曲は山に登ってから下りるまでを、22の標題にわけて表現しています。

1. 夜/2. 日の出/3. 登り道/4. 森への立ち入り/5. 小川に沿っての歩み/6. 滝/7. 幻影
/8. 花咲く草原/9. 山の牧場/10. 林で道に迷う/11. 氷河/12. 危険な瞬間/13. 頂上にて
/14. 見えるもの/15. 霧が立ち上る/16. 太陽が次第にかげる/17. 哀歌/18. 嵐の前の静けさ
/19. 雷雨と嵐、下山/20. 日没/21. 終末/22. 夜

ここから今回は冒頭の「1. 夜」「2. 日の出」「3. 登り道」をご紹介します。

「夜」は弦楽器がB mollの下降音階上に不協和音的に重なり、静寂を表しています。
「日の出(3:04)」は一転、輝かしい朝の太陽が昇る様が描かれ、「登り道(4:49)」では、
チェロとコントラバスの低音弦で、いよいよ登山が始まったことが告げられます。
「登り道」の後半では舞台裏に、総勢16名からなる金管楽器隊が登場。
舞台上のオーケストラがこれに応える場面は聴きどころのひとつです。





リヒャルト・シュトラウス:アルプス交響曲 Op.64 1. 夜 - 2. 日の出 - 3. 登り道
Richard Strauss:Eine Alpensinfonie Op.64
1. Nacht (Night) - 2. Sonnenaufgang (Sunrise) - 3. Der Anstieg (The Ascent)



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2012年07月12日


バルトーク:ルーマニア民俗舞曲 Sz.56 1. 棒踊り (弦楽合奏版)

プロムナード・コンサート
定価:¥ 1,050
新品最安価格:14%OFF ¥ 903 (4店出品)
5.0点 弦楽合奏の魅力凝縮
5.0点 弦楽合奏の宝石箱
発売日:2006-12-20
メーカー:コロムビアミュージックエンタテインメント
アーティスト:イタリア合奏団

♪親しみやすい旋律と手ごろさが人気のピアノ小品集

1915年に作曲された6曲からなるピアノの小品「ルーマニア民俗舞曲」は、
バルトークの民謡採集と研究から生まれた人気の組曲です。
当時ハンガリー王国の一部であったルーマニアの各地の民謡を題材にしたもので、
1909年トランシルヴァニアで採集されたルーマニア人の民謡が主に用いられています。

作曲された1915年、バルトークが34歳のこの年は「ルーマニア音楽の年」と呼ばれ、
この曲の他に「ソナチネ」「ルーマニアのクリスマスの歌」など、
ルーマニア民謡による多くの編曲作品が作曲されています。

「ルーマニア民俗舞曲」は旋法(モード)を中心とした音楽です。
旋律などの原型はそのままに保ちつつ、そこに独特な和声を用いることで、
素朴な民謡という素材に新たな生命が与えられています。

親しみやすさと手ごろな長さから演奏会にはしばしば取り上げられ、
ピアニストだったバルトーク自身もコンサートの際にはよく演奏していました。
元来は「ハンガリーにおけるルーマニア民俗舞曲」という題名でしたが、
作曲当時、ハンガリー領にあったルーマニアは第一次世界大戦により、
領土の大半を失ったため、ハンガリーの名をとり現在の題名になりました。

この組曲は1917年に自身によって小オーケストラ版に編曲された他、
ハンガリー弦楽四重奏団の主宰者でバルトークと親しかったヴァイオリニストの、
セーケイ・ゾルターンによるヴァイオリンとピアノによる編曲版(1926年)、
アーサー・ウィルナーによる弦楽合奏版、管楽アンサンブル版などが存在します。

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ヴァイオリン版は大変親しまれており、メニューイン、シェリングといった大家から、
現代の名だたるヴァイオリニストたちまで、様々な演奏がCDでも聴けます。
また弦楽合奏版はイ・ムジチ(未CD化)やイタリア合奏団でも知られています。

組曲は7つの舞曲の旋律を用いて6つの部分で構成されています。

1. 棒踊り Bot-tanc (Stick Dance)
2. 飾り帯の踊り Braul
3. 足踏み踊り Topogo (The Stomper)
4. ブチュム人の踊り Bucsumi tanc (Bucsumi Dance)
5. ルーマニア風ポルカ Roman polka (Romanian Polka)
6. 速い踊り Aprozo (Quick Dance)

第5,6曲はテレビ朝日の「大改造!!劇的ビフォーアフター」で使用されています。

*今回の演奏はオリジナルの弦楽合奏版です。





バルトーク:ルーマニア民俗舞曲 Sz.56 1. 棒踊り (弦楽合奏版)
Bartók Béla Viktor János:Romanian Folk Dances, Sz.56, BB68
1. Bot tánc / Jocul cu bâtă (Stick Dance) - Strings ver.



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2012年07月08日


バルトーク:ルーマニア民俗舞曲 Sz.56 1. 棒踊り

リリー・クラウス コレクション2 バルトーク:ルーマニア民族舞曲
定価:¥ 1,260
新品最安価格:13%OFF ¥ 1,084 (6店出品)
レビュー平均: 5.0点 (1 人がレビュー投稿)
5.0点 ピアノ嫌いのための
発売日:2007-08-08
メーカー:コロムビアミュージックエンタテインメント
アーティスト:クラウス(リリー)
時間:53(分)

♪作曲とともに民俗音楽の採集と研究に意欲を燃やしたバルトーク

20世紀のベートーヴェンともいわれるハンガリーの大作曲家バルトーク。
作曲家の3大Bといえばバッハ、ベートーヴェン、ブラームスですが、
ブラームスに替えてオーストリアではブルックナーが入るように、
3大Bに並べて称されることもあるほど、その評価は絶対的です。

そんなバルトークには作曲家、演奏家の他にもうひとつの顔があります。
それは世界的な民俗音楽研究の権威という一面です。
彼はハンガリーや、ルーマニアなどの民謡を一万種も蒐集し、
そのうちの1000曲ほどを世に送り出しています。

1904年の23歳の頃、ゲルリーツェプスタ(現在スロヴァキア領)において、
バルトークは初めてトランシルヴァニア出身者の歌うマジャル民謡に触れました。
そして翌1905年に、パリのルビンシュタイン音楽コンクールに出場し、
そこでハンガリーでは知られていなかったドビュッシーの音楽を知り、
また民謡について科学的アプローチを始めていたコダーイに出会いました。

1906年からコダーイや研究者達と共にハンガリー各地の農民音楽の採集を始め、
1913年にはアフリカのアルジェリアまで足を伸ばすなど活動は精力的でした。
1907年、26歳でブダペシュト音楽院ピアノ科教授に就任すると、
更なる民謡の採集が進み、民謡の編曲なども行うようになりました。

作品としてはピアノ小品や、ヴァイオリン協奏曲第1番の2楽章、
また1908年の弦楽四重奏曲第1番にも民謡採集の影響が表れています。
1911年には、自身にとって唯一のオペラとなった《青ひげ公の城》が、
ハンガリー芸術委員会賞から演奏不可能という事で拒絶されたため、
失望した彼は2、3年は作曲をせず、民謡の収集と整理に集中していました。

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1934年には音楽院ピアノ科教授を退職、科学アカデミーの民俗音楽研究員となり、
自分や研究者達が収集したコレクションの整理に取り組める環境を得ました。
バルトークの民俗音楽研究はただの収集活動にとどまらず、
それを分析し自らの音楽語法に昇華させた点に大きな意義があります。

「ルーマニア民俗舞曲」はバルトークのそうした民謡採集と研究がもたらした、
1915年に作曲された6曲からなるピアノの小品の組曲です。
1917年、自身により小管弦楽に編曲され、彼の最もよきルーマニアの友人であり、
また最も民謡採集に協力した人物であるイオン・ブシツィアに献呈されました。





バルトーク:ルーマニア民俗舞曲 Sz.56 1. 棒踊り
Bartók Béla Viktor János:Romanian Folk Dances, Sz.56, BB68
1. Bot tánc / Jocul cu bâtă (Stick Dance)



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2012年07月03日


ドビュッシー:前奏曲集 第1巻 10. 沈める寺

ドビュッシー:前奏曲集第1巻
新品最安価格:¥ 1,676 (6店出品)
中古最安価格:30%OFF ¥ 700 (3店出品)
5.0点 急がず 遅過ぎず 大き過ぎず 小さ過ぎず
発売日:2007-02-28
メーカー:ユニバーサル ミュージック クラシック
アーティスト:ベネデッティ=ミケランジェリ(アルトゥーロ)
フォーマット:Limited Edition

♪海底から浮上し再び沈み行く大聖堂の姿を描く

ショパンやスクリャービンと同じく12曲ずつ全2巻の、24曲の前奏曲を残したドビュッシー。
第1巻は1910年に、そして第2巻は1913年にそれぞれ出版されました。
近代ピアノ音楽の最高峰にして、彼の最高傑作とも呼ばれる作品です。

グレゴリオ聖歌に象徴されるように、西洋クラシック音楽の出発点はモノフォニー-単旋律でした。
それが大バッハによって複数の旋律が高度に絡み合うポリフォニーが極められ、
やがて主旋律に対して伴奏的な和声が伴うホモフォニーが登場します。
これは現代のポピュラー音楽などにも通じています。

そして古典派、ロマン派、後期ロマン派と時代が進むにつれ、
ワーグナーがそうであるように、むしろ和声が前に出るようになっていきました。
これは調性の崩壊に関わる地点にまで至りましたが、
ドビュッシーもまた、音楽における和声の役割を追求した作曲家でした。
旋律に頼らずハーモニーと音の響きで、印象派の絵画のように色彩を描こうとしたのです。

そうした彼の探求の成果が、24の前奏曲集には大いに活かされています。
そしてその究極とも言えるのが、第1巻第10曲の「沈める寺」です。
美しくも高度な和音は時に、片手だけで7音を鳴らすことを要求します。
指は5本ですから、1本で2つの鍵盤を同時に押さえなければなりません。

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この曲のイメージの元になっているのは、ブルターニュ地方の古い伝説です。
コルアイユの王グラドロンは、愛する娘ダユーの為にイースの都を建設しました。
イースは立派な水門と堤防に守られた、海面よりも低い土地に建設された都市。

しかしダユーは放蕩三昧で、彼女が治めるイースは欲と快楽の都になっていました。
この堕落したイースの都に罰を与えるべく神の使いの男が現れ、
彼の言葉に従った結果、繁栄した都は一瞬にして海底に沈んでしまいました。

海底に眠るイースの都は、グラドロンの教会でミサが行われなくなるとき、
この世のものとは思えないほど、美しい姿で浮上してくると言われています。
「沈める寺」は海底の静謐な世界から、徐々に浮上するグラドロン教会が、
やがて完全に海上に姿を現し、そこから鐘の音と祈りの合唱を鳴り渡らせると、
再び深海へと沈んでいく光景を、和音を中心とした音で描写しています。

フランスの首都パリ-Parisの語源は、Par-Is=「イースのような」と言う意味です。
またイースは『トリスタンとイゾルデ』のイゾルデの生地としても知られています。





ドビュッシー:前奏曲集 第1巻 10. 沈める寺
Claude Debussy:Préludes, Book1 10. La cathédrale engloutie



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