2012年05月30日


ショパン:ノクターン 第5番 嬰ヘ長調 Op.15-2

ショパン:夜想曲全集
新品最安価格:12%OFF ¥ 3,564 (5店出品)
レビュー平均: 4.3点 (12人がレビュー投稿)
4.0点 安らぎます
5.0点 清楚に全てを語りつくしたノクターン
発売日:1996-10-25
メーカー:ユニバーサルクラシック
アーティスト:ピリス(マリア=ジョアオ)

♪晴れやかで流麗にして甘美なノクターンの人気曲

ノクターン第5番嬰ヘ長調は、1833年出版の『3つのノクターン』Op.15の第2曲です。
第1曲のノクターン第4番ヘ長調と同じく、1831年から32年にかけて作曲されました。
Op.15はノクターンの創始者ジョン・フィールドの影響から抜け始めた作品で、
後の作風にも通じるような、ショパンのオリジナリティが随所に表れています。

世間的にも“ショパンのノクターンはフィールドを超えた”と評価されますが、
当のショパンは「フィールドと並び賞されて、僕は嬉しくて走り回りたい気分です。」
と手紙の中でその喜びをあらわにしています。
旋律を大事にするフィールドを、ショパンはとても敬愛していたのです。

第5番はショパン特有の翳りや感傷的なところがなく、
どこまでも晴れやかで流麗、甘美な作品です。
Doppio movimentoと表示された中間部は、煌びやかなアルペジオが印象的で、
嬰ハ長調の5連符の上に付点リズムという独創的な構成です。
シンプルながら3部形式の中に魅力が凝縮されていて、
演奏効果も高く人気があるため、頻繁に取り上げられています。

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作曲された1831-32年は、ショパンがパリに来て、まだ駆け出しの頃で、
社交界の貴婦人たちを相手に自作を披露したり、レッスンを施したりしながら、
作曲家、演奏家としての基盤を固めていた時代です。

若き無名の音楽家を、パリはそう簡単には受け入れてくれませんでしたが、
リストはこの天才を見逃さず、積極的にパリの楽壇に紹介しました。
これが追い風となり、ショパンは気鋭の音楽家として花開いていったのです。

やがてショパンの音楽は革新性をもって、独自の世界を築き始め、
ついには恩人リストに勝るとも劣らぬ、変幻自在の境地へと到りました。
男性的で劇的な演奏効果で、外に向けてアピールするリストの音楽と、
女性的な繊細さで、ひとりの人に向けて聴かせるようなショパンの音楽。
両者はあたかも太陽と月のように、それぞれの光を輝かせていたのです。





ショパン:ノクターン 第5番 嬰ヘ長調 Op.15-2
Frédéric François Chopin:Nocturne No.15 in F sharp major, Op.15-2



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2012年05月26日


ショパン:ノクターン 第13番 ハ短調 Op.48-1

ショパン:夜想曲集
新品最安価格:¥ 1,450 (9店出品)
レビュー平均: 5.0点 (2人がレビュー投稿)
5.0点 心に寄り添うノクターン
5.0点 うっとり
発売日:2006-11-08
メーカー:ユニバーサル ミュージック クラシック
アーティスト:バレンボイム(ダニエル)
フォーマット:Limited Edition

♪敬虔な静謐さと劇的な激しさ…ショパンのノクターンを代表する傑作

ノクターンほどショパンの作風にあった形式もないかもしれません。
美しく優雅な旋律を中心とした、甘美で感傷的な音楽。
ショパンという作曲家が内包していたものを、最も自然に表現できたジャンルです。

ノクターンの歴史は古く、発祥は中世にまで遡ります。
それをピアノ独奏曲として確立させたのが、英国の作曲家ジョン・フィールドです。
フィールドのノクターンは、右手が奏でる歌謡風の旋律に、
左手が奏でるアルペジオの伴奏が伴うという単純なものでした。
考え方としてはメンデルスゾーンの無言歌に近いとも言えます。

フィールドは1832年から1833年にかけてパリに滞在しました。
この時にショパンは影響され、自らもノクターンを本格的に作り始めたのです。
“本格的に”としたのは17歳の頃にも、既にノクターンが作曲されているからで、
この事からもワルシャワ時代から、フィールドのことは知っていたと思われるからです。

映画「愛情物語」で知られる第2番変ホ長調は、ショパンの代名詞的な有名曲ですが、
この曲などはまさにフィールドの影響が残る、比較的シンプルな内容です。
しかしここからショパンのノクターンは徐々に深化を見せ始め、
中期から後期にかけては最早、別物と言える芸術作品へと変貌を遂げていきます。

そうした作品群の中でも、最高傑作との声も多いのが、第13番ハ短調Op.48-1です。
Op.48の2曲はジョルジュ・サンドとの仲も良好だった1841年の作。
精神的には安定しているはずですが、特にOp.48-1には激しい悲しみがあります。

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様式はA-B-A' からなる三部形式。しかし、内容は独創的です。
同主調のハ長調に転じたBのコラール(2:02)には、祈るような敬虔さがあります。
それが次第に力強い激情を見せ始め、そのまま再現部へとつながっていきます。
このA'(4:10)の部分が白眉なのです。

Aと同じ旋律を扱っているとは言え、3連符に乗ったその音楽は遥かに情熱的で、
ショパンの内に秘めた感傷や憧憬が迸るかのようです。
Cm-Fm7-G-Cm という和音進行も、たたみ掛けるような3連と共に、
Aの時よりも一際強い感傷性をもって、聴く者の胸に響いてきます。

「2倍の速さで」という指示の通り、この部分には男性的な激しさがあります。
それと同時に内向きなナイーヴさもあり、そんなところも含めて、
最もショパンらしさが集約された音楽と言ってもいいと思います。

コラール部後半の盛り上がりや、再現部の激情など、ドラマ性も大きいため、
第13番ハ短調はピアニストが演奏会で、好んで取り上げる作品にもなっています。





ショパン:ノクターン 第13番 ハ短調 Op.48-1
Frédéric François Chopin:Nocturne No.13 in C minor, Op.48-1



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2012年05月22日


モーツァルト:ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488 第2楽章

モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番 第24番
新品最安価格:23%OFF ¥ 2,145 (15店出品)
5.0点 芳醇旨口の強烈な逆襲
5.0点 内田光子の再録
5.0点 さらなるモーツァルト表現の高みへ
発売日:2009-08-05
メーカー:ユニバーサル ミュージック クラシック
クリエーター:内田光子(演奏) クリーヴランド管弦楽団(演奏)

♪歌にもなった繊細で優美な緩徐楽章

モーツァルトは1781年(25歳)に故郷ザルツブルクからウィーンに拠点を移します。
そしてここからいよいよ、その天才ぶりが存分に発揮されていきます。
妻共々、金銭感覚に疎く、常に生活に苦しみ始めるのもこの頃からです。

暖をとるゆとりもなく、冬の晩に妻と踊り明かし、寒さを凌いだという話もあるほど。
しかし、その貧乏生活がモーツァルトに、驚異的な速度で作品を書かせました。
ウィーンの音楽好きの貴族たちは、金銭的な援助を一切しませんでした。
ですからモーツァルトはひたすら新作を書き、演奏会を開くしかなかったのです。

ピアノ協奏曲はそのいい例で、窮状を打開するために予約演奏会を催しては、
それに合わせてギリギリで作品を仕上げ、練習する間もなく本番に入っていました。
そして自ら演奏して収入を得て、なんとかその都度を凌いでいたのです。

ですが、そうした現実生活には関係なく、作品は深化をみせていきます。
この時期に書かれたピアノ協奏曲は特に傑作揃いで、
1785年の第20番ニ短調を筆頭に、死の直前に書かれた第27番変ロ長調まで、
駄曲はまったく無く、モーツァルトのキャリアの中でも重要な作品が並びます。

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1786年春の予約演奏会のために作曲された第23番イ長調は、
トランペットとティンパニという、華やかな楽器のない室内楽的な作品で、
当時まだ新しかったクラリネットを、オーボエの換わりに用いています。
こうした木管群の響きが第23番に、より落ち着いた雰囲気をもたらしています。

またこの曲の第1楽章では、モーツァルト自身がカデンツァを書き残しています。
第20番以降の作品でこの作業はほとんど見当たらず、
即興性の余地のない、完成したイメージが彼の中にあったことを思わせます。

第2楽章は8分の6拍子の、シチリアーノ風のアダージョです。
感傷的な旋律の深い趣きは、モーツァルトの緩徐楽章の中でも格別です。
80年代に薬師丸ひろ子さんがこの曲に歌詞をつけて、
「花のささやき」というタイトルで歌っていたことでも知られています。





モーツァルト:ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488 第2楽章 [6:30]
Wolfgang Amadeus Mozart:Piano Concerto No.23 in A major, K.488
2. Adagio



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2012年05月18日


J.S.バッハ:G線上のアリア - 管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068 [新録音2012]

バッハ:管弦楽組曲第2番&第3番
新品最安価格:¥ 1,340 (3店出品)
5.0点 名演
4.0点 バッハ管弦楽組曲2番3番他
5.0点 ザ・王道
発売日:2006-11-08
メーカー:ユニバーサル ミュージック クラシック
アーティスト:リヒター(カール)
フォーマット:Limited Edition

♪美しい弦のアンサンブルが紡ぎ出す清浄な音世界

パッヘルベルのカノンショパンの別れの曲ドヴォルザークの新世界より
スメタナのモルダウエルガーの威風堂々ホルストのジュピター…。
クラシックには挙げればきりがない程の名旋律がありますが、
この曲の美しさ、品格はやはり群を抜いているでしょう。

J.S.バッハの『G線上のアリア』は、管弦楽組曲第3番の第2曲アリアを、
ドイツの名ヴァイオリニスト、アウグスト・ウィルヘルミ(1845-1908)が、
ヴァイオリンのG線のみで弾けるように編曲したことがきっかけで
ヴァイオリン独奏曲としても、いっそう広まり有名になった曲です。

G線は4本あるヴァイオリンの弦の中でも、一番音の低い弦で、
柔らかさと力強さを併せ持つ、豊かな音色が特徴です。
ウィルヘルミはこれを活かして、アリアを魅力的な独奏曲へと仕上げたのです。

バッハは1717年から1723年、年齢にして32歳から38歳頃までの間、
ケーテン地方を統治するレオポルド公の宮廷楽長を務めていました。
レオポルド公は若年ながら優秀な宮廷楽団を抱え、
自身も弦楽器やクラヴィアを器用に弾きこなす音楽通でした。

バッハはこの楽団を指導しながら、教会音楽とは趣きの異なる、
管弦楽曲や、協奏曲、室内楽曲などを自由に作曲しました。
この時代がバッハのケーテン時代と呼ばれています。

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4曲あるバッハの管弦楽組曲は、どれもこのケーテン時代に書かれました。
規模の大きな序曲で始まり、様々な古典舞曲を並べるのがこれら組曲の特色です。
こうした組曲の形式は、バッハの時代に好まれ、多くの作曲家たちが用いていました。

管弦楽組曲第3番の編成はオーボエ、トランペット、打楽器、弦楽部。
楽曲は1.序曲、2.アリア、3.ガヴォット、4.ブーレー、5.ジーグで構成され、
第2曲アリアは通常の弦楽器と通奏低音のみで演奏されます。

第1ヴァイオリンが奏でる主旋律は、冒頭からしばらく一音を保ち、
これに寄り添う第2ヴァイオリン、内声を豊かに響かせるヴィオラ、
そして下降するチェロの低音が絶妙なアンサンブルを見せ、
聴く者を清浄で崇高な世界へと誘っていきます。

*演奏と音響を改めた新録音です。





J.S.バッハ:G線上のアリア - 管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068 [新録音2012]
J.S.Bach:Orchestral Suite No.3 in D major, BWV1068 2. Air



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2012年05月14日


ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 Op.67 「運命」 第1楽章 [新録音2012]

ベートーヴェン:交響曲第5番&第7番
新品最安価格:4%OFF ¥ 1,145 (3店出品)
レビュー平均: 5.0点 (5人がレビュー投稿)
5.0点 あまりに豊か!!!完璧!!!
5.0点 「運命」にとらわれず聴いてみよう
5.0点 重厚さと官能・・・
発売日:2005-11-16
メーカー:ユニバーサル ミュージック クラシック
アーティスト:バーンスタイン(レナード)

♪自らの信念を音楽に集約させた交響曲の傑作

私を生につなぎ止めているのは芸術だ。内なるものを表現し尽くすまでは死ねない。                                       L.V.ベートーヴェン

音楽家として絶頂期を迎えようとしていたベートーヴェンを襲った絶望。
それは病により聴覚を失うという、この上ない試練でした。
1802年10月6日、31歳の秋。自殺を決意した彼は遺書を書いています。
有名な“ハイリゲンシュタットの遺書”です。

しかしベートーヴェンはその危機を、不屈の精神を持って乗り越えます。

『自分が使命を自覚している仕事(作曲)をやり遂げないで、この世を捨てるのは
卑怯に思われた。そのため、このみじめで不安定な肉体を引きずって生きていく。』


ベートーヴェンは自分に与えられた才能と、それを人々のために使うのが
自らに課せられた義務であることを、自覚していた作曲家でした。
ですからそれが終わるまで、何としても死ぬことはできなかったのです。

『人々のために曲を書く方が、そうでない時よりずっと美しい曲を書くことが出来る。』

それまでは貴族の愉しみのためにあった音楽を、限られた者だけでなく、
広く民衆のものとしたのがベートーヴェンです。
ですから第九の歓喜の歌は、あんなにシンプルで歌いやすいものになっています。

音楽は最大の啓蒙であると考えていた彼は、音を通して神の声を、
この地上に生きるすべての人々に伝えようとしていたのかもしれません。

交響曲第5番はそんなベートーヴェンの信念が集約された作品です。
「苦悩を突き抜けて歓喜へ」のモットーが凝縮され、音楽に結実しています。
大きな困難を前にしても、怯まず克服しようという自身の姿勢が、
そのまま4楽章の交響曲に描き出されているのです。

音楽的にも“タタタターン”というひとつの動機を執拗なまでに繰り返し、
巨大な世界を構築する第1楽章や、ピッコロ、コントラファゴット、トロンボーンという、
前例のない楽器を追加して壮大に繰り広げられる第4楽章など、
交響曲の歴史の上でも特筆すべき、新たな試みがなされています。

そしてハ短調という調性は、ベートーヴェンの作品では特別な意味を持っています。
「運命」を始め、ピアノソナタ「悲愴」「コリオラン」序曲「英雄」の葬送行進曲など、
悲劇的、闘争的な色合いの濃い、激しい音楽で用いられることが多いのです。

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ベートーヴェンを尊敬したブラームスが、20年をかけて作曲した交響曲第1番で、
ハ短調を用いたのは、もちろん「運命」の影響が大きいのは明らかです。
ブルックナー晩年の大作第8番も威厳のあるハ短調。
また、調性は違ってもチャイコフスキーの第5番ショスタコーヴィチの第5番など、
短調で始まり長調で終わるという構成で、影響を受けている曲もあります。

どんな運命も、それに対する反応のとり方で、意味合いが違ってくる。
困難に屈してただの苦痛で終わらすより、それに立ち向かうことで、
自らを高める好機に変えよと、ベートーヴェンの音楽は語っているかのようです。
そして、そうした精神性は、後に続く作曲家たちにも受け継がれていったのです。

*演奏、音響を刷新した新録音です





ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 Op.67 「運命」 第1楽章 [新録音2012]
Ludwig van Beethoven:Symphony No.5 in C minor, Op.67
1. Allegrp con brio



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2012年05月09日


サティ:ジムノペディ No.1 [ピアノ版]

3つのジムノペディ~サティ・ピアノ作品集
新品最安価格:12%OFF ¥ 1,572 (10店出品)
レビュー平均: 4.6点 (10人がレビュー投稿)
5.0点 音楽のアールデコ
5.0点 ロジェの演奏が抜群
5.0点 それぞれの曲が、一篇の詩のようでした。
発売日:2003-06-25
メーカー:ユニバーサル ミュージック クラシック
アーティスト:ロジェ(パスカル)

♪音楽の新しい地平を開いた異端の作曲家エリック・サティ

90年代前半、日本ではバブル経済が崩壊し、人々は癒しを求め始めていました。
アロマ・テラピーやヒーリング・グッズ、スピリチュアル本などが持て囃され、
TV-CMで流れた坂本龍一さんのピアノ曲が、インストにも拘らず大ヒットした時代です。

音楽の世界ではヒーリング系のコンピレーション・アルバムが数多く発売され、
ジャンルを越えて様々な曲が、1枚の中に収録されていました。
そうした状況の中、クラシック系で最も人気だったのがサティだったと思います。
分けても『ジムノペディ No.1』は、サティの代名詞的な曲として頻繁に取り上げられ、
オリジナルのピアノはもちろん、色々なアレンジ版も巷を賑わしていました。

『ジムノペディ』とはアポロ神の祝日に、裸身の若者たちが舞踊を奉納したという、
古代ギリシャの祭典「ジムノペディア」に由来したサティの造語です。
これが描かれた壺画にインスパイアされ、作曲されたとも言われています。
中世の教会旋法を用いた、4分の3拍子の簡素ながら洗練された音楽です。

サティはクラシックの世界でも極めて異端な人です。
13歳でパリ音楽院に入学した才能の持ち主でありながら、
既存の音楽体系に飽き足らず、退学して独自の音楽世界を構築していきました。

反体制的な気質の持ち主でしたが、それは音楽に対しても同じで、
いわゆる西洋音楽的な理論を、ことごとく打ち砕いた人でした。
例えばワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」が、調性崩壊の第一歩とされていますが、
サティのそれはもっと大胆で、和音的に理論外の試みと言えるものでした。

また、楽譜の調号や小節線、拍子記号をなくしたり、オーケストラ曲の楽器として
サイレン、飛行機の爆音、タイプライター、ピストル、ダイナモの音を導入するなど、
すべてが規格外と言える作曲家でした。

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そして「家具の音楽」という概念を生み出し、音楽は襟を正して鑑賞すべし、
という考えに反旗を翻し、家具の様にただそこにある音楽を提唱しました。
これはまさしく現代のBGMであり、ヒーリング音楽にも通じる先駆的なものです。

ドビュッシー、ラヴェル、ストラヴィンスキーなど、同時代の作曲家たちは、
そろってサティの作曲技法に影響されたことを表明しています。
そしてイーノ、ケージ、ライヒといった現代音楽家たちにも、
その流れは連綿と受け継がれているのです。

21世紀の現代でもまったく古さを感じさせないどころか、
未だに時代の一歩先を行っているかのような、異端の作曲家エリック・サティ。
様々な困難が続く現代日本にも、その癒しの旋律は必要なものなのかもしれません。

*ドビュッシーによる管弦楽版を公開していましたが、今回は原曲のピアノ版です。





サティ:ジムノペディ No.1 [ピアノ版]
Erik Alfred Leslie Satie:Gymnopédies No.1



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2012年05月06日


パッヘルベル:シャコンヌ ヘ短調

バロック・ファンタジー
定価:¥ 2,100
新品最安価格:¥ 2,980 (1店出品)
コレクター品最安価格:¥ 3,980 (1店出品)
発売日:1998-10-21
メーカー:コロムビアミュージックエンタテインメント
アーティスト:井上圭子
時間:68(分)

♪崇高さと美しさを併せ持つオルガン曲の名作

ドイツ・バロック期の作曲家ヨハン・パッヘルベルとヨハン・ゼバスティアン・バッハは、
パッヘルベルがバッハよりも、32歳年上という世代の差がありながらも、
実は一度だけ、出逢っていた可能性があると推測されています。

パッヘルベルとバッハ家の交流は1677年、彼が24歳でアイゼナハに移り、
宮廷オルガン奏者の職に就いた頃に始まっています。
アイゼナハは、J.S.バッハの父ヨハン・アンブロジウス・バッハの故郷です。
パッヘルベルはそこでバッハ一家と出会い、アンブロジウス・バッハと親しくなり、
彼の子供たちの家庭教師を任せられました。

バッハ家との交流は、エアフルトに転居した、翌年の1678年からも続き、
パッヘルベルは、長兄のヨハン・クリストフ・バッハの家庭教師を務め、
ヨハン・クリスティアン・バッハの家に住んでいました。

ヨハン・クリストフ・バッハは、後にヨハン・ゼバスティアン・バッハを引き取り、
10歳で両親を亡くしたゼバスティアンの、親代わりとなって育てた人物です。
クリストフ・バッハが1694年10月に結婚した際、バッハ家の人々は10月23日に
オールドルフでそれを祝い、音楽を提供するため作曲家たちも招待されました。

その時はすでにクリストフの教師ではなかった、パッヘルベルも参加したと思われ、
そうであれば、J.S.バッハ(当時9歳)とパッヘルベルが出会った唯一の機会です。

その後、作曲家となったJ.S.バッハは、パッヘルベルの作品を意識するようになり、
自ら編曲を行うなどして、研究や勉強を怠りませんでした。
コラールを一行ごとに区切り、その旋律の縮小形による模倣から主旋律に入る
「パッヘルベル・コラール」と呼ばれる様式は、J.S.バッハに大きな影響を与えました。

オルガン曲の作曲家としても名高かったパッヘルベル。
そんな彼の最高傑作と呼ばれるのが「シャコンヌ ヘ短調」です。
多くのオルガン曲を作曲し、シャンコンヌも6曲が残されていますが、
ヘ短調の格調の高さと、美しさは群を抜いています。

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シャコンヌとはバロック時代に流行した、ゆったりとした3拍子の変奏曲の一種で、
低音が4小節または、8小節の短い定型を何度も繰り返しながら、
その上で次々と新しい旋律が変奏されていきます。

しかし、カノンの低音のように、まったく同じフレーズが繰り返されるのではなく、
基本は保ちながらも、時には違った和音進行をとるなど、様々な変化を見せます。
特に、変イ長調に転じる[7:24]からの展開は効果的であり、またとても美しいです。

シャコンヌといえば大バッハヴィターリが有名です。
しかし、パッヘルベルも3大シャコンヌとして、ここに加えても遜色ないほどです。
カノンばかりが目立つ一発屋扱いも、これを聴けば不当だとお分かりいただけるはずです。

*本来はオルガン曲ですが、今回は旋律の美しさが前に出る、弦楽合奏でお届けします。





パッヘルベル:シャコンヌ ヘ短調
Johann Pachelbel:Chaconne in F minor



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2012年05月03日


パッヘルベル:3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ 二長調

パッヘルベルのカノン~バロック名曲集
価格:
SMJ(SME)(M)(2008-11-19)
売り上げランキング: 5361

♪「カノン」と「ジーグ」の連続演奏で完成する『パッヘルベルのカノン』

「カノン」の新録音に続いて「ジーグ」と、『パッヘルベルのカノン』を特集していますが、
カノン・シリーズの締めくくりは、オリジナルに沿った演奏でお届けしたいと思います。

この曲は『3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ 二長調』が原題で、
「カノン」と「ジーグ」を続けて演奏するのが正式なスタイルです。
一般には「カノン」だけを演奏するのがほとんどですが、
2曲を連続演奏することで、初めてパッヘルベルの本意も理解できるでしょう。

また、これまでは弦楽オーケストラの編成で録音してきましたが、
今回はオリジナル通り、3本のヴァイオリンとチェロ、チェンバロの編成にしました。
弦楽パートだけで考えればこの作品は、弦楽四重奏に極めて近いと言えます。
大編成では大味になってしまう、微妙なニュアンスをお楽しみ頂けると思います。

ところで、『カノンとジーグ ニ長調』には、パッヘルベルの自筆譜がありません。
パッヘルベル作なのは確かなようですが、楽器編成には疑問も持たれています。
研究者や指揮者によっては、元はオルガン曲だったとする声もあります。

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パッヘルベルは生前からオルガン奏者としてとても有名でした。
作曲家としても特に、オルガン曲のジャンルで知られ、『コラール変奏曲集』
『コラール前奏曲集』など多数のコラール編曲を作曲しています。
このあたりにも“カノン=オルガン曲説”の根拠があると考えられます。

真相は定かではありませんが、そんなことはどうでもいいようにも思います。
事実、現代でもパッヘルベルのカノンは、弦楽以外でもピアノ独奏を始め、
それこそあらゆる楽器で演奏され、ポップスの分野でもカバーが後を断ちません。
“名曲はどんな形でも名曲”の、最も典型的な例と言ってもいいでしょう。





パッヘルベル:3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ 二長調
Johann Pachelbel:Canon and Gigue in D



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パッヘルベル:ジーグ ニ長調

パッヘルベルのカノン〜バロック音楽の楽しみ
新品最安価格:¥ 6,500 (3店出品)
中古最安価格:50%OFF ¥ 500 (13店出品)
レビュー平均: 4.5点 (4人がレビュー投稿)
4.0点 カノンといえばミュンヒンガー
5.0点 サイコーの一枚
4.0点 最高です、オルガン協奏曲!
発売日:2001-04-25
メーカー:ユニバーサル ミュージック クラシック
アーティスト:ミュンヒンガー(カール)

♪『カノン』と対を成す明るく軽快な舞曲『ジーグ』

パッヘルベルのカノン』が1曲のみの作品ではなく、『カノンとジーグ ニ長調』という、
2曲でひと組の作品中、前半の曲を指すことは、一般にはあまり知られていません。
『カノン』があまりに有名過ぎて、『ジーグ』が霞んでしまった感じです。

そこで今回は普段あまり表に出ない、『ジーグ』にスポットを当ててみましょう。

ジグ (jig) は、8分の6拍子または8分の9拍子の舞曲で、
イギリスやアイルランドの民俗的な踊りの形式の一つです。
ジーグ(gigue) とも呼ばれますが、これはバロック時代にフランスをはじめとする、
ヨーロッパ各地で流行した際のフランス語風の綴りに由来しています。

8分の6拍子のものを「ダブル・ジグ」(double jig)と呼び、
8分の9拍子のものを「スリップ・ジグ」(slip jig) と呼びます。
また、8分の12拍子のものもあり、これは「シングル・ジグ」(single jig) 、
または「スライド」(slide) と呼ばれています。

バロック組曲の終曲に置かれ、急速なテンポで演奏されるのがひとつの型でした。

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パッヘルベルの「カノン」と対を成す「ジーグ」は、8分の12拍子の典型的なジーグです。
「カノン」は第1ヴァイオリンから始まり、次いで第2、第3ヴァイオリンが続きますが、
「ジーグ」は冒頭、第3ヴァイオリンが先に入り、第2、第1の順で後に続きます。
後半は第2ヴァイオリンから始まって、第3ヴァイオリン、第1ヴァイオリンの順です。
形式はカノンではないので、同じ旋律の追従ではありません。

ゆったりと穏やかな「カノン」と、リズミカルで楽しい「ジーグ」は、
対照的な音楽でありながら、互いを引き立てあう効果的なカップリングです。
現代で例えるなら、シングル盤CDのA,B面といったところかもしれません。





パッヘルベル:ジーグ ニ長調
Johann Pachelbel:Gigue in D



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posted by CMSL クラシック名曲サウンドライブラリー at 13:32 | 弦楽合奏曲 (String ensemble) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする