2011年08月29日


シューベルト:野ばら -Heideröslein- Op.3-3 D.257

アヴェ・マリア~シューベルト:歌曲集
新品最安価格:16%OFF ¥ 877 (14店出品)
レビュー平均: 5.0点 (5人がレビュー投稿)
5.0点 ミニョンの歌
5.0点 1814年10月19日
5.0点 心洗われる歌声の美しいこと
発売日:2004-01-21
メーカー:ワーナーミュージック・ジャパン
アーティスト:ボニー(バーバラ)

♪ゲーテの詩に作曲したシューベルト初期の傑作歌曲

歌曲王・シューベルトのリートの中でも、最も知られる代表的な作品です。
初期の歌曲としては『魔王』と並ぶ傑作とされています。

ゲーテによる原詩にはシューベルトの他、ウェルナー、シューマン、ブラームスなど、
多くの作曲家が曲を付けていて、その数は150を越えると言われています。
そうした多くの作品の中では、シューベルトとウェルナーのものが突出していて、
日本では近藤朔風の訳詩によって長く親しまれてきました。


童は見たり 野なかのばら
清らに咲ける その色愛でつ
飽かず眺む
紅におう 野なかのばら

手折りて往かん 野なかのばら
手折らば手折れ 思い出ぐさに
君を刺さん
紅におう 野なかのばら

童は折りぬ 野なかのばら
折られて哀れ 清らの色香
永久にあせぬ
紅におう 野なかのばら

(シューベルト版・近藤朔風 訳)
ウェルナー版はこちら


少年が野に咲くバラを見つけ、それに駆け寄り見とれていた

「お前を折るよ」と少年が言うと「それなら私はあなたを刺します
あなたが私を忘れないように」とバラは応えた

バラの抵抗とため息、嘆きも虚しく、少年はバラを折ってしまった…


というのが原詩の大意ですが、ここには若き日のゲーテの、
恋愛に纏わる悔恨の思いが込められていると言われています。

当時21歳の学生だったゲーテは、ゼーゼンハイムという田舎の村で、
訪れた牧師の家の三女、フリーデリーケにひとめぼれをしました。
ふたりは1年ほど交際を続けましたが、大学を卒業したゲーテは学業を究めるため、
黙って彼女のもとを去って行ってしまいました。

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フリーデリーケは、ゲーテの突然の行為に傷つきつつも、
彼への純粋な思いから、そのまま独身を貫き生涯を終えたのです。
つまり少年は若きゲーテ、野ばらはフリーデリーケということです。

こうした詩にシューベルトはあえて、素朴で清廉な曲を付けました。
あくまでふたりの純真な愛に、焦点を当てたかったのかもしれません。

ゲーテの詩に作曲したシューベルトの作品を、
友人がゲーテに渡すという機会がありましたが、
それに対してゲーテからは、何の返事もなかったということです。





シューベルト:野ばら -Heideröslein- Op.3-3 D.257
Franz Peter Schubert:Heidenröslein Op.3-3 D.257



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2011年08月14日


リスト:《2つの伝説》 1. 小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ S.175-1

ラ・カンパネラ(ベスト・オブ・リスト)
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レビュー平均: 5.0点 (2人がレビュー投稿)
5.0点 天才的な演奏が多い。
5.0点 強烈。
発売日:2007-06-20
メーカー:TOSHIBA-EMI LIMITED(TO)(M)
アーティスト:シフラ(ジョルジュ)

♪小鳥と聖フランチェスコの対話を繊細に表現

2人の聖フランチェスコをテーマにした作品『2つの伝説』から第1曲です。
こちらの主役はアッシジの聖フランチェスコ。
“フランチェスコ”とひと口に言えば、1181〜1182年にイタリアのアッシジに生まれ、
後にフランシスコ会を創設した聖人、アッシジのフランチェスコを指します。

裕福な家庭に生まれたフランチェスコは、若き日を放蕩のままに過ごしていました。
しかしある夜、神の声を聞いたことで改心を始め、すべての財産を捨て、
自給自足の生活の中、ひたすら神に祈るようになっていきました。

自然と一体化した聖人として、国や教派を超えて世界中の人から愛され、
小鳥への説教という伝説も、そんな彼を象徴するようなものになっています。
「キリストの教えを小鳥に説くと、小鳥たちはじっと彼の声に耳を傾けた」
という伝説を描いた、ジオットのフレスコ画はよく知られるところです。

晩年のリストは尊敬するアッシジのフランチェスコに帰依し、
その僧位を四つも受けたほどでした。
そして、アッシジのフランチェスコに纏わる伝説の中でも特に有名な、
ベバニャへ赴く聖人が小鳥に説教したという伝説を選び、
ピアノ音楽『2つの伝説』の第1曲の題材としました。

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この伝説は教会書籍『聖フランチェスコの小さな花』の第16章にあり、
リストはこれにインスピレーションを受けて作曲したのでした。

高音のトリルやトレモロはあたかも小鳥たちのさえずりを、
低音の威厳ある響きはフランチェスコの言葉を表現しているかのようです。
聖人が説くキリストの教えに、即座に反応する小鳥たちの姿が、
目に浮かぶように生き生きと描かれています。

どこまでもダイナミックに、パオラのフランチェスコの奇蹟を描いた第2曲に対し、
第1曲は繊細で細やかな機微の表現が魅力です。
宗教的合唱曲『アッシジの聖フランチェスコの太陽賛歌』の主題が引用されています。
『2つの伝説』は1865年8月29日に、リスト自身によりブダペストで初演されました。





リスト:《2つの伝説》 1. 小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ S.175-1
Franz Liszt:St.Françios d'Assise, la prédication aux oiseaux
Légendes S.175-1



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2011年08月07日


リスト:《2つの伝説》 2. 水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ S.175-2

ホロヴィッツ未発表カーネギー・ホール・ライヴ[2]~シューマン:幻想曲、ショパン:舟歌、リスト:伝説~水の上を歩くパオラの聖フランチェス
新品最安価格:16%OFF ¥ 2,110 (4店出品)
レビュー平均: 4.0点 (1人がレビュー投稿)
4.0点 イスラメイもいいけれど…
発売日:2009-10-21
メーカー:BMG JAPAN Inc.
アーティスト:ホロヴィッツ(ウラディミール)

♪パオラの聖フランチェスコが起こした奇蹟をダイナミックに表現

若い頃から信仰心が厚く、作品にもその傾向が見られていたリストですが、
十年来に渡って交際を続けてきた、ザイン=ヴィットゲンシュタイン侯爵夫人である
カロリーネとの結婚を、式の前夜に取り消されたことがきっかけとなり、
精神的な虚脱感から抜け出すため、マドンナ・デル・ロザリオ修道院に入りました。
そして37歳にしてピアノを捨て、下級聖職者として修行する身となったのです。

『2つの伝説』はこうしたできごとがあった、1861年〜1863年にかけて作曲されました。
2曲は同名異人のふたりの聖フランチェスコに纏わる伝説をテーマとしています。

パオラの聖フランチェスコは、アッシジのフランチェスコが1226年に没してから
約200年後の1416年に、南イタリアのパオラ生まれた修道士です。
少年期をフランシスコ会で送った彼は、やがてミニモ会(最も小さい者の意)を創立。

後に、フランス国王ルイ11世を救うためにフランスへ派遣され終油を授けたほか、
シャルル6世、ルイ12甥に仕え、シャルル8世の教育にも貢献しました。
清貧を貫き、数々の奇蹟を起こし、人々の支持を集めました。

彼が起こした奇蹟の中でも特によく知られるのが、メッシーナ海峡にマントを広げ、
その上に立って、左手に燃える石炭をもち、海を歩いて渡ったというものです。
この奇蹟を描いたシュタインレの絵画を、リストは自宅に所有していました。
『水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ 』は、この絵画にインスパイアされた作品です。

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宗教的合唱曲《パオラの聖フランシスに寄す》(1862)からの主題が引用され、
荒れる海上を悠然と歩くフランチェスコの姿を、劇的に表現しています。
この曲にはリスト自身によるオーケストラ版も存在しますが、
近年の研究ではピアノ版よりオーケストラ版が先だったという説もあります。
それほどに壮大でダイナミックな作品です。

パオラの聖フランチェスコは、リストの守護聖人でもありました。
フランツ・リストの「フランツ」は、パオラの聖フランチェスコの名前に由来します。
ですからリストは終生、この作品を愛し大事にしていたようです。

リストは楽譜の序文として、聖フランチェスコとその奇蹟に関する長文を記しています。





リスト:《2つの伝説》 2. 水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ S.175-2
Franz Liszt: "St.Françios de Paule marchant sur les flots"
Légendes S.175-2



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posted by クラシック名曲サウンドライブラリー at 07:07 | 器楽曲・Piano | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする